電線を礼賛する

2017/10/06 11:00 

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ちしきの金曜日
 

電線を礼賛する

電線好きの方と一緒に電線を愛でてまわりました。開眼した!
電線好きの方と一緒に電線を愛でてまわりました。開眼した!
電線。残念ながらあまり人気者ではない。でもぼくにとって電線がつくりだす風景はおもしろい。ときに素晴らしいとさえ言えると思う。でもなかなか理解してもらえない。

そんなとき、すてきな電線好きの方と知り合った。運命の出会いだと思う。赤い糸ではなく電線で結ばれた縁である。

今回はその方と電線を愛でてまわった顛末をご紹介したい。分かってくれる人がいますように。
(大山顕)

石山蓮華さん

もともとぼくには電柱への興味があった。先日書いたかわいいビルの記事でもやおら電柱の風景について触れたりしている。

工場やジャンクションといった土木構造物に入れ込んでいる人間としては当然ではある。最も身近なインフラ構造物、それが電柱だからだ。

なのでこれまでちょくちょく電柱の写真は撮っていた。
今回撮ったかっこいい電柱。神田に立っていらっしゃいます。
今回撮ったかっこいい電柱。神田に立っていらっしゃいます。
ただ「電線」にはちゃんと注目していなかった。電柱にかまけてた。いやそれそもそも一体物だろう、と言われると返す言葉もない。

「電線をおろそかにしていた」と反省したのは、石山蓮華さんと知り合ったことによる。この方、無類の電線好きなのだ。
今回、電線の愛で方指南をお願いした石山蓮華さん。なぜこんな写真でご紹介なのかは、以下読み進めていただければ分かります。
今回、電線の愛で方指南をお願いした石山蓮華さん。なぜこんな写真でご紹介なのかは、以下読み進めていただければ分かります。
石山さんは舞台やテレビで活躍されているタレントさん。

たいへん失礼ながら、さいしょは「タレントさんがキャラづくりのために一風変わったことをあえてやってる」を疑っていた(ほんとうにすみません)。

でもちがった。本気だ。その名も石山蓮華の『電線礼讃』という動画配信や同じ『電線礼賛』と名付けられたサイトを見てもわかる。

インスタもこんな↓だし!
石山さんのインスタグラム。みごとに電線写真ばかり。すばらしい!
石山さんのインスタグラム。みごとに電線写真ばかり。すばらしい!
電線礼賛。とてもいい名前だ。本記事のタイトルはそれにならった。

考えてみたら「電線好き」をアピールして、タレントとしてなんの得があるのか。ぼく自身の「マニアズレ」とも呼ぶべき疑心暗鬼を猛反省した次第である。

それにしても電線である。電柱じゃなくて。

実は世の中には電力・送電趣味の人はけっこういる。かなり歴史ある界隈だ。趣味の王様・鉄道とも縁が深いこともあって、博覧強記の強者も多い。鉄塔趣味の方々などはその代表だ。

何ごとにも詰めが甘いぼくは、電柱に関してもそれほど詳しいわけではない。だから本格的に界隈に入っていくのをためらっていた。あれだ、もはや相当な実績と知識がなければ軽々しく「鉄道趣味」を名乗れないと感じてしまうあれに似ている。でも惹かれる。

そんな生半可なぼく(よくもまあそんなやつが「キャラづくり」を疑えたもんだ)でも、石山さんならやさしく一緒に電線話をしてくれると思ったのだ。

これはみくびっているのではない。実際、石山さんったら電線のメーカーに見学に行き、業界のカタログを日々眺め勉強していて、すごくちゃんと詳しい。でも「マニア」な感じがしないのだ。

石山さんのそういう「マニア」にならないスタンスはほんとうにすばらしく、見習うべきことをたくさん知った、というのが今回の記事の結論です。

びっくり切り株物件

で、今回なにをしたのかというと、石山さんに「お勧めの電線」を挙げてもらい、それを見に行く、という「電線巡礼」を敢行した。

これがものすごく楽しかった。

まずは文京区目白台に世にも珍しい状態になっている電線があるという。連れて行ってもらった。
「あれです!」と石山さん。
「あれです!」と石山さん。
よく目を凝らしてみると、なんだか電線の一部がへんだ。
よく目を凝らしてみると、なんだか電線の一部がへんだ。
近づいて下から見上げると、こんな。切り株だ!
近づいて下から見上げると、こんな。切り株だ!
電線にくい込んだ樹が空中に取り残されている。
電線にくい込んだ樹が空中に取り残されている。
これは何ごとかというと、ここに立っていた街路樹が育ち、電線に触れるようになり、そのうち取り込んでしまった。

その樹が切られることになったが、うかつに電線に触れられない。で、こうやってその周囲が取り残されたというわけだ。

本稿執筆現在のGoogleストリートビューにはその街路樹が残っている
この物件に対して「電線ってすごいですよねー!」という石山さん。たしかにそうだ。
この物件に対して「電線ってすごいですよねー!」という石山さん。たしかにそうだ。
ぼくがすごいと思ったのは、これに気づいた石山さんに対してだ。よく発見しましたね、と言うと

「ここを通りかかったときに、ふと視界の端に異変を感じて、はっと見たらこんなだったんです」

とのこと。わかる。あるものを追い続ける人生を送っていると、常に無意識下でサーチが動くんですよね。
「この斜めの切り口に、電線に触れないように慎重に切った様子がうかがえますよね」と石山さん。たしかに。丁寧な仕事というべきか。
「この斜めの切り口に、電線に触れないように慎重に切った様子がうかがえますよね」と石山さん。たしかに。丁寧な仕事というべきか。

世の中は観察すると楽しいことに満ちあふれている

しょっぱないささか色物だったが、めずらしさで気を惹こうという魂胆ではない。これは電線のタフさがよく現れた事例なのだ。

道中、何回も「電線ってがんばってますよねー」という感慨がお互いの口から漏れた。そうなのだ。風雨にさらされ、紫外線を浴び、気温の変化にあい、ほこりも付着し、引っ張られ、揺れる。それらにメンテフリーで何年も耐えるのである。ちょっと信じがたい。「一般に耐用年数30年だそうです」と石山さん。すごい。

そしてこの切り株事例にはもうひとつ「樹が電線に触れている」という点に石山さんがこれを推すポイントがあると感じた。これに関しては後述しよう。

ともあれ、ごくふつうの電線も愛でてまわった。というか、当然のことながら街を歩けばそこに愛おしい電線がいくらでもある。今回は同好の士が同行している(だじゃれではない)。なのでどこを歩いても楽しい。
こういう住宅街の路地の電線もいい。
こういう住宅街の路地の電線もいい。
あらためてじっくり見ると、実に見応えがある。ぼくらの日常は観察すると楽しいことであふれているのだ。
あらためてじっくり見ると、実に見応えがある。ぼくらの日常は観察すると楽しいことであふれているのだ。
数歩進んでは立ち止まり、見上げ、を繰り返す至福のひととき。
数歩進んでは立ち止まり、見上げ、を繰り返す至福のひととき。
「これもいいですねー」「ですねー」の繰り返し。どれも鑑賞しがいがあって、かえって「ふつうの電線とは何か」を考え始めた。
「これもいいですねー」「ですねー」の繰り返し。どれも鑑賞しがいがあって、かえって「ふつうの電線とは何か」を考え始めた。
見上げる。
見上げる。
見上げる。
見上げる。
撮る。
撮る。
撮る。
撮る。
数百メートル進むのに1時間、というペースであった。ちょう楽しい。
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@nifty

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