フィギュア:羽生の五輪連覇、敵は「重圧」…バトンさん

2017/10/12 08:00 

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ◇米国・伝説のスケーターに聞く 66年ぶり快挙、羽生に託す

 フィギュアスケート男子でソチ五輪金メダルの羽生結弦(ANA)は来年2月の平昌五輪で66年ぶりの連覇を狙う。達成すれば1948年サンモリッツ五輪、52年オスロ五輪を制した米国の伝説のスケーター、ディック・バトンさん(88)以来となる。バトンさんがこのほど米ニューヨークの自宅で毎日新聞の取材に応じ、自身の経験を振り返りながら、羽生への評価やアドバイスを語った。【福田智沙】

 バトンさんはサンモリッツ五輪を史上最年少の18歳202日で制し、オスロ五輪でも金メダルを獲得。「もっといいものや、たくさんのことにトライしたかった」と、新たなジャンプや技にも取り組んだ。世界で初めてダブルアクセル(2回転半ジャンプ)や、世界初の3回転ジャンプとなるループに成功。ループだったのは「(スケートのエッジの)アウトサイドで踏み切るのは、より簡単だった。サルコウのようにインサイドで踏み切るのはとても難しかった」ためだ。

 最初の五輪は「いいスケーターではなかったが、その時のベストを尽くせた」。だが、2度目の五輪は「重圧があった」と明かす。「以前よりいいスケーターになっていたが、ベストを出せなかった」。オスロ五輪では本番を控えて練習をしすぎ、本番の5日前に完璧な演技をしてしまうと、その後少しずつ調子を落とした。それでも、現在は行われていない規定(決められた図形を氷上にスケートのエッジで描くもの)で首位に立った。フリーでは世界初の3回転ループを成功させたが、ダブルアクセルにミスが出た。結果的に連覇したが「それ以来、ずっと私を悩ませている」と心残りになっている。

 ◇「リラックス、楽しんで、勇気を持って、練習量も適度に」

 タイトルを守るのは難しいと感じている。「攻められるより攻めるほうが簡単だし、挑まれるより挑む方が簡単だ。2回目は守りすぎてしまった」。五輪で勝つのに必要なことは「リラックスすること。楽しむこと。勇気を持つこと。練習しすぎないこと」と言い切る。

 バトンさんは羽生を「彼は幅広い才能がある。素晴らしいジャンプを持っている」と評する。羽生の今季のプログラムは2季前の再演となるが、「スケーターは2年で変わる。成長するし、多くを学ぶし、経験も積む。今回、彼が演じるプログラムは前とは違う」と感じている。

 平昌五輪では羽生や、世界選手権2回優勝のハビエル・フェルナンデス(スペイン)、宇野昌磨(トヨタ自動車)、ネーサン・チェン(米国)、金博洋(中国)に加え、他の数人の選手にも勝つチャンスはあるとバトンさんは考えている。「今のルールでは誰もが勝てる。4回転ジャンプを何回跳んできれいに決めるかが重要だからだ」

 バトンさんは現在の男子選手は4回転ジャンプを跳ぶ回数が多すぎ、そして独自性を出せていないと感じている。「骨、そして心でいい作品を演じられる選手がいい。技術なくして芸術なし。芸術なくして技術なし」。人をひきつける演技を望んでいる。

 ◇ディック・バトンさん

 1929年7月18日、米国ニュージャージー州生まれ。48年サンモリッツ、52年オスロ両五輪男子金メダリスト。世界選手権は48年から5連覇した。世界で最初にフライングキャメルスピン(跳び上がってから、上体と上げた脚を水平にして回るスピン)を始めたことでも知られる。52年に現役引退した後は解説者として活躍。76年に世界フィギュアスケート殿堂入り。

毎日新聞

スポーツ

スポーツ一覧>