平昌五輪:分断の地 融和を願う 南北共催を一時模索

2018/01/10 23:35 

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 ◇祭典を前に 開幕まで1カ月

 南北朝鮮を分かつ軍事境界線(38度線)に南接する「高城(コソン)統一展望台」の眼前に、金剛山(クムグァンサン)が連なる。11年前まで南北離散家族再会事業の面会場が設けられていたが、今は行き来が遮断された。平昌(ピョンチャン)五輪の競技会場は、ここから南へ約100キロ。半島で唯一、38度線で分断される行政区「江原道(カンウォンド)」の3都市に、全てが集められた。

 1950年に始まった朝鮮戦争が、53年に休戦に入ってから65年。「(戦争の傷痕が残る)江原道は『平和な社会の奨励』を掲げる五輪精神を実現できる最良の地」。韓国政府は、3度目のエントリーとなった今回の大会招致でも、世界に向けてこう強調し続けた。

 実際、韓国側には大会を南北融和につなげようという動きがあった。

 「招致決定後、北朝鮮との部分共催を目指した」。スポーツ交流を通じて南北の交流を図る韓国統一省下の社団法人「南北体育交流協会」の金慶星(キム・ギョンソン)理事長は毎日新聞の取材に、大会関係者の間で非公式に練られた構想を明らかにした。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の肝煎りで「北側」の江原道の馬息嶺(マシンリョン)に開発されたスキー場を会場に利用する案や、北側と南側の江原道の沿岸部をクルーザーで結ぶ案などが浮上したという。実現はしなかったが、金理事長は「五輪の成功は北朝鮮が参加してこそだ」と、大会を「平和の祭典」とも位置付けた。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、昨年9月の国連演説で「北朝鮮の選手団、温かく歓迎する南北の共同応援団を想像すると胸が熱くなる」と語るなど参加を呼びかけた。

 祭典が1カ月後に迫った9日、北朝鮮は沈黙を破り、参加の意向を示した。直前の参加表明には、同盟関係にある米韓の離間を図る「五輪の政治的利用」との批判も集まる。それを踏まえても、韓国国民の中には南北融和への思いがある。

 開催まで2カ月を切った昨年末、朝鮮戦争を体験したという林炳成(イム・ビョンソン)さん(73)が、韓国中部の栄州(ヨンジュ)市から観光で統一展望台を訪れていた。開戦時は幼く、しっかりした記憶はない。それでも街が緊張に包まれていたことは覚えているという。

 有料望遠鏡で北側を眺めると、隣接する村の国旗掲揚塔に取り付けられた北朝鮮の国旗が見えた。朝鮮戦争は約1000万人の南北離散家族を生んだとも言われる。「この景色を見ると、心が痛く、苦しくなる。同じ民族なのだから互いを認め合い、発展していくべきだ。北朝鮮の五輪参加は、必ず南北の和解につながる」。林さんは、そう声を絞り出した。

 開会式と閉会式が行われる平昌五輪スタジアム(平昌郡)近くの川沿いには、大会期間中にポールが立ち、参加国の国旗を掲揚する。北朝鮮国旗も、北西から平昌に向けて吹く「大関嶺(テグァルリョン)の寒風」を受け、はためくだろう。祭典は「南北融和」の願いを実現させる契機になるのか。

 ◇平昌五輪

 韓国・江原道にある平昌郡、旌善(チョンソン)郡、江陵(カンヌン)市の3都市で7競技102種目が実施される。大会期間は2月9〜25日。95前後の国と地域から約2900人の選手の参加が見込まれている。平昌は2010年、14年大会にも立候補したが相次いで落選。3回目の挑戦で招致に成功した。

毎日新聞

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