平昌五輪:観光都市にひずみ 「地価高騰、再開発頓挫も」

2018/01/12 07:00 

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 ◇祭典を前に 開幕まで1カ月

 韓国・江陵(カンヌン)市の基幹道路の交差点に並ぶ平昌(ピョンチャン)五輪のマスコット、トラの「スホラン」とツキノワグマの「バンダビ」像の前で、観光客が入れ替わり記念撮影をしていた。背後では、五輪に合わせて高層ホテルの建設が急ピッチで進む。多くの地元住民らは、観光都市として更に発展した大会後の街の風景を想像する。一方で、新たな課題も浮き彫りになっている。

 江陵は、韓国東側の日本海沿いに位置する。朝鮮王朝時代に「良妻賢母のかがみ」と言われ、5万ウォン札の肖像にもなっている申師任堂(シンサイムダン)の出身地として知られる。新鮮な海産物や、海岸沿いに喫茶店が並ぶ「安木(アンモク)コーヒーストリート」が人気で、江陵市がある行政区「江原道(カンウォンド)」の担当者は「韓国人が最も行きたい観光地」と説明する。

 一方で、江原道は最も交通インフラ整備が遅れた地域でもあるという。江陵市はソウルからバスで約3時間。山岳を迂回(うかい)する鉄道なら、5時間はかかる。そのため、韓国は五輪に向け約3兆7600億ウォン(約3900億円)を投じて「高速鉄道(KTX)」を開通させた。ソウルからの所要時間は2時間を切り、海岸沿いを中心に、外資を含めたホテル建設への投資を呼び込んだ。

 江陵市中心部の市場で名物の干物店を営む男性(55)は「五輪招致で市場もきれいになった。もっと生活水準をよくしたい。発展することは大歓迎だ」と「五輪効果」による観光客の増加に期待する。

 街の景観を損なうからと、移転を余儀なくされた古い商店街もあるが、新設された簡易商店街で果物を売る女性(78)は「うまくいけば、それでいい。五輪で変わっていくものもあるだろうから、さみしくはないよ」と笑顔を見せた。

 一方で、急速な整備は地元の不動産やホテル業界に、小さくないひずみを生み出した。

 観光客の玄関口となる江陵駅の周辺には、古びたモーテルが建ち並ぶ。近くで不動産業を営む李得愿(イトゥゴン)さん(47)によると、一帯には再開発の構想もあったが、ブローカーが一部の土地を買い占めたため、地価が数年前の約10倍に高騰。整備できないまま大会を迎えることになった。李さんは「海外の観光客の目に触れると思うと恥ずかしい。五輪が始まったら周囲を壁で覆ってほしい」と嘆く。

 また、大会期間中の宿泊料金を大幅に引き上げるホテルも散見される。韓国の中央日報によると、平昌・江陵地区では1泊の宿泊料金を約100万ウォン(約10万5000円)に設定したホテルもあるという。

 過剰な「五輪特需」を期待した料金設定は、韓国人の五輪離れも招いている。韓国文化体育観光省の昨年12月の調査によると、競技を競技場で観戦すると回答した韓国国民は5.1%にとどまり、同9月の7・1%を下回った。テレビ観戦は88.4%に達する。

 江陵市職員で五輪期間中の宿泊部門を担当する廉賢燦(ヨム・ヒョンチャン)さん(48)は「法的に規制はできないが、業界全体で料金の適正化キャンペーンを実施している」と説明する。それでも、李さんは「『ぼったくりの江陵』というイメージを持たれてしまうのでは」と危惧する。

毎日新聞

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