ハンドスピナーのギネス世界記録24分って具体的にどれぐらい長い?

2018/03/12 11:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ひらめきの月曜日
 

ハンドスピナーのギネス世界記録24分って具体的にどれぐらい長い?

すごいハンドスピナーがどれだけ回るのか、実験中。
すごいハンドスピナーがどれだけ回るのか、実験中。
とあるルートから「ハンドスピナーのすごいのがあるけど、見る?」というオファーをいただいた。

人工衛星の姿勢制御装置とか作ってるメーカーとベアリングメーカーが組んですごいハンドスピナーを作ろう!というプロジェクトの産物で、「一本の指の上で回す最長回転時間24分46秒34」なるギネス世界記録を達成したとのこと。

…なんかすごい、というのは分かるが、具体的にハンドスピナーが24分回るのがどれぐらいすごいのかがピンとこない。

これ実際に見ないと分からんなという気がしたので、見に行ってきた。
(きだてたく)

ギネス世界記録のハンドスピナー、なにがどうすごいのか

お邪魔したのは、三菱プレシジョンという会社。こちらが、人工衛星の姿勢制御装置を作っているメーカーさんだ。
一緒にハンドスピナーを作ったベアリングメーカーのミネベアミツミの方も来ていただいたので、ひとまず話を聞いてみた。

きだて いきなりなんですが、このハンドスピナーってどこがどうすごいから回るんですか?
向かって一番右が三菱プレシジョン長井さん その隣がミネベアミツミ小口さん。
向かって一番右が三菱プレシジョン長井さん その隣がミネベアミツミ小口さん。
三菱プレシジョン 長井さん(以下、長井) まず、今回のギネス世界記録となったハンドスピナー『Real Spin Ms'』ですが、全体的な設計と部品のアッセンブリー(組み立て)を三菱プレシジョン側で、部品の製造をミネベアミツミさまで担当しました。
で、すごさにはいくつかポイントはあるんですが…。ハンドスピナーというのは手で回しますよね。その初速と、スピナーの形状が持っている慣性モーメント(どれだけ回り続けようとするか、という力)をかけ算したものが「角運動量」となります。要するに回転の勢いですね。


あっ!いきなり物理だ、と思わず身構えてしまったが、結局のところザックリ「回転の勢い」と言ってもらったおかげで気分的にだいぶラクになった。

あと、同行してくれた編集石川さんが「かく運動量の“かく”ってどういう字ですか?」といきなり聞いてくれたのも見事なアシストだった。
おかげで、それ以降の長井さんたちの説明がちょっと低学年向きになったように思う。
話を聞きに来たやつらが予想以上に文系過ぎて、不安そうな長井さん。
話を聞きに来たやつらが予想以上に文系過ぎて、不安そうな長井さん。
長井 対して、摩擦などのロストルク(回転抵抗)というのがありまして、これによって回転の勢いが少しずつ減らされていって、最後に止まります。
我々のハンドスピナー『Real Spin Ms'』は、形状による慣性モーメントの大きさと、ロストルクの小ささ。この2つがすごいので、回転時間が長くなります。


慣性モーメントとか角運動量 という言葉に耳なじみが無さすぎるけど、簡単に言うと「よく回る形をしたハンドスピナーがめっちゃなめらかに回るから、長い時間回転しました」ということだ。
…簡単に言いすぎたせいでものすごくバカみたいになったが、そこにはちゃんと数式とか理屈があるのだと思う。そっちはたぶん難しすぎて聞いても分からないだろうけど。

ミネベアミツミ 小口さん(以下、小口) どうすごいかは、実際に回してもらったほうが早いかもですね。これが実物なんですけども。
すごいハンドスピナーこと『Real Spin Ms'』。49,800円で限定販売(100個)もされたが、なんと2日で完売。
すごいハンドスピナーこと『Real Spin Ms'』。49,800円で限定販売(100個)もされたが、なんと2日で完売。
おおー、これがギネス世界記録の。
なんかタイヤっぽい見た目で、たしかに良く回りそうだ。

小口 じゃあ先に、普通のハンドスピナーを回してみてください。これがだいたい2~3分回るやつです。
はいはい、知ってる知ってる。よく回るよね、ハンドスピナー。
はいはい、知ってる知ってる。よく回るよね、ハンドスピナー。
うん、普通に回る。
これぐらいでも充分に「わー、すげー回るー!」ってテンションを上げることが可能なやつだ。

小口 じゃあ、次に『Real Spin Ms'』を回してみてください。
ピッタリくる表現を探すとしたら「別次元」としか。想像のだいぶ上を行く回転力だ。
ピッタリくる表現を探すとしたら「別次元」としか。想像のだいぶ上を行く回転力だ。
うおおおおお!なんじゃこれ!
まず、持った感じがかなりずっしり重い。そして、手で勢いをつけたときの回し始めが異常になめらかだ。
あと、普通なら「シャー」とか「ブーン」とかいうような回転音がほとんどしない。かすかな「シュー…」という風切り音がするぐらい。

長井 その重さが、まず慣性モーメントを得るための設計の一つですね。回転の中心からできるだけ離れたところに重いものを配置する、というのが基本です。

小口 外側の金色が重い真ちゅうです。内側は航空機にも使われている高硬度のアルミ合金で、薄く軽く作ってます。材料の指定なども含めて三菱プレシジョンさま側の設計を受けて、弊社で作製しました。
指でなんか円盤的なものを持ってるなー、という感覚しか無い。回転してるのを忘れるスムーズさ。
指でなんか円盤的なものを持ってるなー、という感覚しか無い。回転してるのを忘れるスムーズさ。
…という話を聞いている途中で、手の中でハンドスピナーが回っているのを忘れてしまっていた。
それぐらいにスムーズで、音がしなくて、振動もないのだ。水平を保っている限りなんの抵抗もなく、ただ手の中で回っているだけである。
うわー、これ本当にすごいな。
むしろ24分とかウソで、ほっといたら無限に回るんじゃないか。
こちらも同行してくれた編集藤原くん。いつも無表情な彼がほほえむレベルで、回るのが楽しい。
こちらも同行してくれた編集藤原くん。いつも無表情な彼がほほえむレベルで、回るのが楽しい。
本来ならば、どれぐらいスムーズに回っているのか動画を見てもらうのがスジなのだが、なんとここで編集石川さんのカメラが壊れるというアクシデントが発生。
実際に回転しているところが撮れていなかったので、ミネベアミツミの公式動画チャンネルにアップされていた動画を見ていただきたい。ちょっと長いけど、ギネス世界記録達成時の映像も入ってます。

宇宙のベアリングがすごい話

それにしてもこのハンドスピナー、本当に回転がなめらかですごい。
このなめらかさが、さっき長井さんが仰っていた「ロストルクが小さいのがすごい」という話だと思うのだが、これがボールベアリング(軸の周りで小さなボールが回転することで摩擦を軽減し、なめらかに回転させる部品)の性能によるものなのだろうか。

小口 ベアリングって生活用品にいっぱい使われているんですが、どうしても認知度が低い。なので、ハンドスピナーのような玩具に使われてブームになったのが興味深かったんです。
なので、玩具用のベアリングにどれだけマジメに挑戦できるか、やってみたかったというのがスタートですね。
ベアリングメーカーの本気を見せたかった、とミネベアミツミ小口さん。
ベアリングメーカーの本気を見せたかった、とミネベアミツミ小口さん。
長井 弊社では慣性基準装置(IRU)という装置を作っておりまして、これは人工衛星に搭載されているんですが、内蔵したTDG(チューンドドライジャイロ)というジャイロで人工衛星が自分の傾きや姿勢を検出するものです。
で、このTDGにミネベアミツミさまのベアリングを使ってまして、回転数は10,000rpm。で、人工衛星は一度打ち上げてしまうともう修理も何もできないので、メンテナンスフリーで10年15年と回らないとダメなんですね。


きだて いま長井さんはしれっと仰いましたが、10,000rpmって1分間に1万回転ですよね。その猛烈なスピードで最低でも10年は回り続けるって、ベアリング業界ではわりと当たり前の話なんですか?

小口 いえ、三菱プレシジョンさんはおそらく世界でも最も厳しいお客様ですね(苦笑)。
その厳しい仕様の中で鍛えていただいているので、信頼もある。だからこそ、たかが玩具でここまでやるのか、という話も聞いていただけたんだと思っています。
『Real Spin Ms'』に使用されているパーツ。下段中央の小さいのが核となるベアリングだ。
『Real Spin Ms'』に使用されているパーツ。下段中央の小さいのが核となるベアリングだ。
きだて なるほど、このハンドスピナーのベアリングにも、そういう宇宙技術的なものが使われているんですね。

小口 いえ、『Real Spin Ms'』のベアリング自体はそういう宇宙レベルのものではないです。

きだて あれ、そういうんじゃないんですか。

小口 通常のベアリングにちょっとスペック的に特殊なものを盛り込んだものでして…一番特殊と言えるのは、中のボールを一般的な鉄の硬球ではなくて、セラミックにしてるところですかね。摩擦抵抗を減らすためなんですが。

そこはちょっと残念だが、まぁとにかく回るんだからいいのか。
 つぎへ>

 
@nifty

写真ニュース