テーマパークで見落としがちな「エイジング」の技術が実は奥深い

2018/10/11 11:00 

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ロマンの木曜日
 

テーマパークで見落としがちな「エイジング」の技術が実は奥深い

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テーマパークに遊びに行くと、「古めかしく作ってあるもの」を見ることが多い。たとえば西部劇に出てきそうな雰囲気をリアルに再現したアトラクションの中に入ると、吊り下げられたランプだとか、ドアの取っ手だとか、そういうものがちゃんと大昔からそこにあるように錆びついた色合いになっている。

でも、当たり前だけどあれはその時代からそこにあったわけではなく、ピカピカの新品をその時代のものっぽく加工してあるのだ。

新品を古めかしく見せる塗装技術を「エイジング」というらしい。「アンチエイジング」じゃなくて「エイジング」。時間を一気に進ませる技術なのだ。

その「エイジング」の仕事をしていた友達がいる。どのような現場で働いていて、どんな技術やノウハウがそこにあるのか、気になったので話を聞いてみた。
(スズキナオ)

幼なじみに真面目に話を聞くという変な緊張

今回話を聞く私の友達・楠本浩章さんは、私が中学生の時の同級生で、その頃からずっと遊んでいる。もう30年近い付き合いになる。漢字の名前だとなぜか自分としてはしっくりこないので、以下、クスモト君と書かせていただきます。
「そんなに撮ってどうすんのよー」のクスモト君。
「そんなに撮ってどうすんのよー」のクスモト君。
長い付き合いではあるのだが、お互いの仕事の話をすることはほとんどない。会っても「最近のゲームってすごいよ」とか「この前、芸能人見たよ」とか、他愛ない話ばかり。それがある時、ドライブの途中だったか、ふと彼の仕事についてチラッと聞く機会があり、塗装の仕事をしていて、主にテーマパークで物を古く見せる作業をしていると言うので、「なんか珍しい、面白い仕事だな」と思った。

しかしその時はそれ以上深く突っ込まず、すぐに元の与太話に戻った。ただ、そこで聞いた「エイジング」という言葉の面白さがずっと心の片隅に残っており、いつかゆっくりその仕事について聞いてみようと思い続けてはいたのだった。そして今回、ようやくその場を持つができた。二人で面と向かってじっくり話すこと自体、なんか久々で緊張する。

と、そのクスモト君の話に入る前に、彼の「エイジング」に対する関わり方がどのようなものだったかをまとめたい。

・名前は言えないけどすごく大きなテーマパークの「エイジング」作業員として約3年間働いていた
・とはいえクスモト君は本人いわく「下っ端も下っ端」。未経験でその世界に飛び込んだという
・職場で「師匠」と呼べる人物に出会い、一から手ほどきを受けた
・現在はその職場を離れ、建設現場で作業をする職人さんたちを集めて色々な現場に派遣するような仕事をしている

そんな彼なので、もちろん「エイジング」の世界を完全に知り尽くしているわけではない。あくまで、ある一人の職人による話、という感じで読んでいただければ幸いです。

テーマパークで大活躍する「エイジング」

――疑うわけじゃないけど、まず、「エイジング」っていうのは、本当にあるの?

「あるよ!本当だよ。『エイジング』。『エイジング塗装』とも言う。もともと新しいものを、あえて古く見せるようなことだよ」

――それは大きな業種としては何になるの?

「塗装業、かな。塗装業の中の『エイジング塗装』っていうジャンルみたいな」
長い付き合いゆえに親し過ぎて「本当かよ!」と思ってしまうけど本当のようです。
長い付き合いゆえに親し過ぎて「本当かよ!」と思ってしまうけど本当のようです。
――その「エイジング」の仕事はいつからしてたの?

「5年前ぐらいから3年間はやってたのかな」

――なんで辞めたの?

「結構大変だったのよ。それに神みたいな人がたくさんいて、全然かなわなかったの」

――その「エイジング」はもともとやってたとか、そういう経験はあったの?

「ないよ。それまでもテーマパークの仕事に関わってはいたんだけど、その時はコンクリートで岩を作るとか、また別のことをしてたんだわ」

――え、それはそれで興味あるな。岩?

「テーマパークのあちこちに岩があったりするでしょう。ああいうのの造形をしてたんだ」

――それもまた今度聞きたいよ。まあ、とにかく「エイジング」をやっていたと。ディズニーランドとかUSJとか、ああいうところって古い時代の設定のエリアがあったりするよね。

「あるでしょ。中世のお城、とか。西部開拓時代のバーとか」

――あるある。ああいうのが全部「エイジング」のたまものなんだね。それってテーマパークだとめちゃくちゃ必要とされるものだよね。

「めちゃくちゃ必要だよ!テーマパークってそういう、大昔の雰囲気を作るところが多いでしょ。そういうところには全部必要。あとは映画のセットとかね」

――なるほど。そうか、映画で時代劇とか西部劇とか撮る時も「エイジング」の出番なんだな。未経験で入って、修行みたいなものはあるの?研修というか。

「まあ僕はほとんどバイトみたいなものだったからそこまでハードではなかったけど、修行はある。修業っていうか、つきっきりで基礎から教えてもらった。師匠に。完全に基礎から。例えば、何色と何色を混ぜたらどんな風になるとかも最初は分からなくて、そういうのを教わるのよ。『この色を作ってみろ』とか言われるんですよ。4色の塗料だけ使ってこの色を作れとか。例えば、黄色と黒を混ぜると濃い緑になるんだよ?驚くじゃないっすか。こうやってこんな色ができるんだな、って。それも知らなかったからね」

――教わってすぐ習得できるものなの?

「うーん。僕は色を作るのは苦手だった。『調色』っていうんですよ。塗装をする時にはそれが大事で、クライアントに『これとまったく同じ色にして欲しい』って言われた時に、すごく難しいの。塗料を一滴加えただけで微妙に変わっちゃうから。師匠はすぐに同じ色を作れる」

西部開拓時代のランプを作るには

――なるほど。それは確かに知識と経験がないとできないよね。で、ある程度それを習得したとして、「エイジング」っていうのは実際どういう風にやるの?最初、何からやるの?

「何って……。まず、こんな風にしたいっていうイメージを固めるのよ。大抵はサンプルがあるんだわ。『これと同じ感じにしてください』って、本当に古い物を見本として目の前に置かれて、それと同じような風合いにするのね」

――イメージって「何年ぐらい昔のもので」、とかってこと?

「うん。それもだし、それよりも、例えば、さっきのランタンなんだけど」
話を聞く前に事前に近くの公園で見せてもらったランタン。
話を聞く前に事前に近くの公園で見せてもらったランタン。
もとはIKEAで399円で買ったものらしい。もちろん最初はピカピカだった。
もとはIKEAで399円で買ったものらしい。もちろん最初はピカピカだった。
「これだったら、例えば『何年も屋外に吊るしてあったもの』っていうイメージを自分で作ったの。ここらへんが一番雨に当たって錆びてる」
イメージに沿って錆びを作っていくんだそうだ。
イメージに沿って錆びを作っていくんだそうだ。
――本当だ。なるほど、「こういう場所でこんな風に使われていたもの」とかっていうイメージを最初に固めるんだね

「そうそう。見本となるものはあるんだけど、全部が完全に同じじゃなくて、それぞれの細かいイメージは職人さんが一人一人作るんだ。イメージを作り込み過ぎて最終的にダメ出しされることもあるけどね」

――例えばどんなダメ出し?

「錆びがうるさすぎる。とか」

――錆びがうるさい(笑)なんかすごいね。「海が泣いている」みたいな。

「あとは汚い、ボロ過ぎる、とか」

――ははは。ボロく見せなきゃいけないのに、ボロボロ過ぎたらダメなんだもんね。難しいな。

「そうなのよ。このランタンだったら、まず、黒い塗料を全体に塗るのね。もちろんちゃんと養生して、塗らない場所はきっちり分けて。塗料は車の塗装とかに使うのと同じ油性のもの」

――必ず最初は黒にするの?

「いや、ものによるよ。ベースを白にすることもあるし」

――その塗るのは、特殊な塗料とかではないんだね。

「買おうと思えば買えるものだよ。それが乾いたら、赤と黒を混ぜたような、焦げ茶よりももっと赤っぽい色を適当にチョンチョンってつけて、擦るようにしたり、叩いて布で拭いてなじませる。あと、わざとちょっと垂らしたりする。雨が流れたら錆びも垂れるじゃないですか。自然な感じにしていくんだわ。そうやって徐々に明るい色を重ねていくのよ。最終的には白を水ですごく薄めた色を全体にぶっかける。そうするとホコリをかぶったような雰囲気になるんだわ」
実際に火を灯してみると、確かにいい雰囲気。西部劇の夜の感じだ。
実際に火を灯してみると、確かにいい雰囲気。西部劇の夜の感じだ。
でもよく見ると、地の色である新しい銀色が残っている。
でもよく見ると、地の色である新しい銀色が残っている。
「ガラスの部分はもともと透明だったんだけど、クリアコートっていう、塗装がはがれないように最後に塗るものがあって、それの『つや消し』のやつを塗って曇りガラスっぽい風合いを出したの」
このランタンはエイジング仲間にも好評だったらしい。
このランタンはエイジング仲間にも好評だったらしい。

ピストルと刀と戦車を持ってきた友達

――エイジングに向かない素材ってあるの?木でもプラスチックでもいけるのかな?

「大抵なんでもいける。例えばさっきの刀は木だもん。あれはただの木刀だし」
事前に公園で見せてもらった刀。
事前に公園で見せてもらった刀。
もともとは土産物屋で買った木刀だったという。
もともとは土産物屋で買った木刀だったという。
「刀の刃の部分が難しいのよ。師匠に相談したら、刃の部分は銀箔を貼らないと本当の輝きは出ないって。だからまず、銀箔を貼って、そこに黒を塗っていくんだけど、刷毛に濃い黒と薄い黒を半分ずつ塗って、なんか、こう、うまく色のムラを作るっていうか、説明が難しい……」

――自然な風合いを作るっていうことね。

「でもこれは全然失敗作なんだ。師匠に見せたら『サンマみたいだな』って言われて。ダメな刀はサンマなんだって」

――ダメな刀はサンマに似るんだな。知らなかったよ。

「あと、ピストルは、あれは100均で買ったんだわ」
持ってみるとめちゃくちゃ軽い。
持ってみるとめちゃくちゃ軽い。
「あれもなんか全然うまくいかなかったんだけど、握る部分はちょっといい色になったなと思って」
途中の工程の方がいい感じ風合いだったらしい。
途中の工程の方がいい感じ風合いだったらしい。
――リュックから刀とピストルが出てくるってヤバいよね。そういう偏った思想は……。

「無いっすよ!銃も刀も練習台にちょうどいいのよ。画像検索すれば見本も出てくるし」

――戦車も持ってたよね?

「そうそう。あれは、最後失敗してダメだー!って金色に全部塗っちゃったから完全に失敗作なんだけど、鉄が錆びると表面につぶつぶができるでしょ。あれを表現したんだ」
刀とピストルと戦車がリュックに入っていた。
刀とピストルと戦車がリュックに入っていた。
――確かに、錆びた表面って粒っぽくなるね。

「あれはパテでチョンチョンっと粒を作って、上から塗料を塗っていくのよ。その参考になるかと思って持ってきた」

――色々持ってきてくれてありがとう。

「これは友達にあげたものなんだけど、『ずっと土に埋まってた電卓』を作ったこともあるよ」
新品なので問題なく使用でき、こちらも好評だったとか。
新品なので問題なく使用でき、こちらも好評だったとか。
――なるほど、面白い。色々できるんだね。最初に聞いた時は、「なんでも錆びさせる薬剤」みたいなのがあって、まずそれをかけるのかと思ってたわ

「いやいや、本当に錆びたらダメじゃん。実際はただの新品だから」

「エイジング」の現場について聞いてみる

――「エイジング塗装」をしていたテーマパークでは、どれぐらいの人がそういう作業をしてたの?

「何百人もいますよ。24時間体制でメンテナンスをし続けてるんですよ。塗装が剥げたらそれを補修したり。すごい忙しい」

――不思議だよね。エイジングして作ったものが実際に雨に打たれて劣化したら、それはダメなんだもんね。

「そしたらすぐ元に戻す(笑)劣化したらダメだから。何度でも最初に設定した時のものに戻すの」

――面白い。時間を操作してるみたいな感じだ。そこで働いている人たちはどんな人が多いの?

「僕が知る限りではほとんどの人が美大出身だった。みんな教育を受けてるしセンスも良いのよ。僕が勝てるわけないのよ!」
美大卒にはかなわないそうだ。
美大卒にはかなわないそうだ。
――その現場には色んな塗料が揃ってるの?

「めちゃくちゃ揃ってる。無限にある。無限は言い過ぎた」

――それを使ってみんな一人一人で作業してると。

「大きいものは共同作業だけど、一人でやれるものは一人でやる。『この通りに古い感じにしてください』ってクライアントがバーンと見本を置いて、『えー!無理なんですけどー!』って(笑)」

――それは、急いでやらないといけないの?

「納期はあるからね。師匠はそれが速いのよ。色作りが適確だから塗り直しがない。ミスがないんだ」

――さっきから出てくる「師匠」っていうのは誰なの?

「いるのよ。めちゃくちゃ上手な人がいる。僕は全然だめなんだけど、神の域の人がいる。僕がやる工程の3倍ぐらいかけて丁寧にエイジングしていくんだわ。しかもそれが速い。師匠は美大を出てからずっとその世界の人で、歴も長いんだよ。その人に色々教えてもらったんだ」

――「エイジング業者」っていうのは日本にたくさんいるんだろうか。

「いると思うけど、全体でどれぐらいかはわからない。塗装業の中の一つのジャンルだから、やっぱり普通は塗装って綺麗に塗るのを専門にしてるのがほとんどだから。汚す方はそれに比べると少ないだろうね。全国各地でいつでも必要な仕事ではないだろうしな」

――専門技術って感じだもんね。例えば辞めたらどうするんだろうね。

「テーマパークと1年ごととかの単位で契約してやってる人が多いんだけど、辞めたら……どうするんだろう。普通の塗装とは全然違うからね。映画の美術とかの方に行くのかな」

――そうか、映画やドラマなんかでもその技術は絶えず求められそうだもんね。

「うん。僕も映画のセットを作る仕事も少ししたことがあるんだけど、忙しかったよー!大抵納期が短い。でもそこにいる人たちもすごい熟練の人たちだった。前に学校の校舎を古い感じにエイジングした時があって、その時は職人さんが、塗料を靴の先に塗って壁を蹴ってた。学校の壁って生徒が蹴った跡とかあるでしょ。あれを実際に足で作ってるの。すごくリアルなんだ。荒れた学校だったら、薄い茶色を塗ってヤニが付いた感じを出すとか」

――すごいな。そうやって世界観が作られているんだな。

「映画のセットはテーマパークと違って、いかにそう見せるかが最重要で、テーマパークみたいに耐久性はそんなに求められないとか、違いはあるけどね。映画のセットはベニヤ板で作ったりするから」

町にあるものをエイジングで作るとしたら?

――町を歩いてたら、色々錆びたものとか汚れたものとかあるでしょう。ああいうのを見て「これ作れるな」とか思うの?

「思うよ。こういう色を使えば表現できるかなとか」

――例えばこれは大阪の西九条にある町工場なんだけど、これは作れるの?
なんの機械なのかわからないが迫力がある。
なんの機械なのかわからないが迫力がある。
「これは簡単かも。まず下地を白で塗る。そこにパテで錆びでできた粒を作って、これ、錆びの色が一色じゃないよね。そこを上手に作って、赤黒い色から明るくしていって、最後はめちゃくちゃ薄い錆び色を上から垂らす」
「これならできますよ」と即答の友達。
「これならできますよ」と即答の友達。
――錆びの表現は楽なの?

「うーん、でも『錆びが一番奥が深い』って師匠が言ってた。一緒のものが一つもないじゃん?その物にそれぞれの錆び方があるから」

――師匠が言うんだから間違いないな。

「師匠もそうだし、一流の職人さんを観察してたら、普段から錆びをじっと見てるのよ(笑)そこら辺の錆びたものをよく見てる。やっぱり本物を見て、どうしたらこれを作れるかって考えてるんだ。錆びの中でも銅だと『緑青』って言って、たまに十円玉で緑色になってるのあるじゃないですか、ああいう錆び方をしたり。色々あるんだよね」

――あれはどうやって表現するの?

「地の色を作った後で、最後に深緑色の塗料を叩きつけていく感じだろうね」

――「エイジング」する上で一番難しいものって何だった?

「石」

――石なんだね。

「石むずかしい。金属は古くなったら錆びるけど、石って古いも新しいもないんだよね。白と黒と灰色の三色をパパパッと吹きかけて塗っていくんだけど、正解がわからなすぎる」

――自然に古びた感じをどうやって出すかっていうことだね。石って言っても色々あるもんな。

「人工物より自然の物の方が難しいと僕は思いました。それで言うとディズニーシーのあの山(「ミステリアスアイランド」というエリアにある「プロメテウス火山」という山)は、すごいよ。一流の職人さんたちがみんな言うもん。『あの山はヤバい』って。相当な人たちがやってると思う。岩肌がとんでもないから」

――たまに火がバーッと出る山だよね。あれだけの大きさだと大勢で作るんだろうな。

「うん。複数の人でイメージを合わせないと無理だろうし。すごいよあれは」

――そんな風に、「この岩はヤバい!」みたいに「エイジング」に注目してテーマパークを見て回ったら楽しそうだね。

「絶対面白いよ!ディズニーでもUSJでも、本当に細いところまでみんな工夫してるのよ。職人さんの技を見て欲しいよ」

――「この場所のエイジングを見よ!」みたいなおすすめの場所ってある?

「さっきの山を含めてディズニーシーがとにかくすごい。のと、あと、個人的には川崎の『ウェアハウス(神奈川県川崎市にあるアミューズメント施設)』は見て欲しい。すごい才能のある職人さんのチームが手掛けてるから。あれはすごい。九龍城(香港にかつてあった巨大な建築物。正確には『九龍城砦』)をイメージして、むちゃくちゃ凝ってるよ」
川崎「ウェアハウス」の外観。確かにすごい。
川崎「ウェアハウス」の外観。確かにすごい。
トイレもこの通り。
トイレもこの通り。
「あとは『新横浜ラーメン博物館』とかも、細かいところまですごい作り込まれててすごいよ。あれもベテランの職人さんたちが作ってると思う」

――今度行く時は「エイジング」目線で見てみるわ。改めて面白い技術だな。

「新しいものを古くするって、なんか変だよね。すごい職人さんだとどんなものでも表現できるからね。師匠が言ってたんですよ、『塗料を質に変える』って」

――すごい!名言っぽい!どういう意味?

「わかんない」

――わかんないんだ!

「例えば塗料で、ペンキが熱で溶けたような表現をすることもできるし、材質そのものを変えちゃうこともできる。木を鉄に見せたり。そういうことを塗料でやるっていうことだと思う」

――今は全然違う仕事をしてるんでしょう?たまに「エイジング」したくならないの?

「たまに塗りたくなるよ」

――そのアイコス、やればいいんじゃないの?
クスモト君はヘビースモーカーゆえ、iQOSを二台持ちしている。
クスモト君はヘビースモーカーゆえ、iQOSを二台持ちしている。
「これを錆びさせる必要、ある?嫌だよ!綺麗なのがいいよ。乗ってるバイクの塗装が剥げちゃったことがあったんだけど、めちゃくちゃ落ち込んだもん。自分が使うものはピカピカがいいっす」

話を聞いた後、近所の路地をうろうろしながら、「これはどうやって作る?」と聞いて回った。
「はいはい。これはパテで粒つくって赤茶色系の塗料を塗っていけばできるかな」 。
「はいはい。これはパテで粒つくって赤茶色系の塗料を塗っていけばできるかな」 。
「はいはい。こういう錆びが一番やりやすいのよ。そんなに色が複雑じゃないでしょ」。
「はいはい。こういう錆びが一番やりやすいのよ。そんなに色が複雑じゃないでしょ」。
「はいはい。これは良いわ。使ってないと出せない色だね。ちょっと時間かかるかもしれないけど、できなくはない」。
「はいはい。これは良いわ。使ってないと出せない色だね。ちょっと時間かかるかもしれないけど、できなくはない」。
と、付き合いの長い友達が急に頼もしい存在に感じられて不思議なひと時となった。

塗料を使って時間を操るかのようなマジカルな技術、「エイジング」。ここで聞いた話がすべてではないと思うが、テーマパークに何回も行ったことがありながら、これまで自分が何の気なしに見過ごしてきたものの存在にグッと興味が湧いてくるような、貴重な話であった。
飲み物とおつまみと刀が同居する取材現場。
飲み物とおつまみと刀が同居する取材現場。
色々と話を聞かせてくれたクスモト君、ありがとうございました!今度、実際に「エイジング塗装」の手ほどきをしてくれるというので楽しみにしている。
  

 
@nifty

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