暮らしに灯を 和ろうそくの魅力発信する老舗4代目の思い

2021/05/03 11:28 

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 力強くも柔らかみのある炎が特徴的な和ろうそく。滋賀県内で唯一、伝統的な「手掛け」で和ろうそくを製造・販売しているのが、創業107年の老舗「大與(だいよ)」(高島市今津町住吉)だ。4代目で社長の大西巧(さとし)さん(41)は「ろうそくは心に寄り添うものでもある。いずれは世界中で使ってほしい」と話す。【日高七海】

 和ろうそくは石油から精製されたパラフィン製のろうそくとは異なり、ハゼやウルシなど植物性の素材を原料としている。ろうそくの灯芯(とうしん)の周りに素手ですくったろうを塗り重ねていく独特の手掛け製法を用いており、一人前になるには10年かかると言われる。

 大学4年の時、父で3代目の明弘さん(69)から会社の歴史や、和ろうそくへの思いなどを聞いた。社会とのつながりを実感できる仕事がしたいという思いと重なり、「父の話がふに落ちた」。大学卒業後、京都の線香メーカーに3年勤めた後、大與に入社。父に師事して昔ながらの技術を受け継ぎ、永平寺(福井県)にも製品を納めるなど信頼を築いてきた。

 一方で、大西さんは「伝統工芸という名前だけで生き残るのが難しい時代になった」と語る。2014年、新たなブランド「hitohito」を設立し、東京のホテルに売り込んだ。こだわりの商品に自負があった。ただ、どこにも採用されなかった。「ここまで良さがわかってもらえないのか」。衝撃を受けた。

 国内の需要に限界も感じていた19年11月、和ろうそくを携え、10日間かけて米国を横断。インテリアショップや手芸店などを一軒一軒訪ね歩いた。以前から海外の人が興味本位で和ろうそくを買ってくれることはあったが、本当の良さを直接伝えたいと思った。

 日本とは異なり、ろうそくを日常的に使う習慣がある米国。素材や使う場面などを各地で一から説明すると、予想以上に好評だった。「アメリカでの10日間は、海外にも力を注ごう、受け入れられていく商品を作り、見せ方をしていこうという自信になった」

 20年3月には欧州へも渡る予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期になった。それでも、ろうそくのある暮らしを提案し、新たな価値を見いだしていくことが「灯をともしたいと思ってもらえることにつながる」と前を向く。

 今年5月には真ちゅうで作ったろうそく消しや芯切りばさみなど、ろうそく周りの道具に着目した新商品も発売予定という。「ろうそくの火そのものにもいろいろなことを感じてもらえる仕掛けがあり、見た人がどうとでも取れるのが魅力の一つ。横にいて黙って話を聞いてくれる親友のようなものでありたい」

 ◇大與

 滋賀県高島市今津町住吉2の5の8。1914(大正3)年に創業した和ろうそくの専門店。宗教用から自宅用まで幅広く扱う。オンラインショップ(http://warousokudaiyo.shop-pro.jp/)でも購入可。0740・22・0557。

毎日新聞

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