米金融市場がピリピリ 「債務上限」交渉難航、リミットへ警戒ムード

2023/05/26 16:38 

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 米連邦政府の借金限度額「債務上限」の引き上げを巡るバイデン政権と野党・共和党の交渉が難航していることを受け、米金融市場が神経質な値動きとなっている。ダウ工業株30種平均は25日まで5営業日連続で下落し、デフォルト(債務不履行)に備えた米国債の保証料率も一時約14年ぶりの水準に高騰した。「タイムリミット」とされる6月1日に向け警戒ムードが一段と強まりそうだ。

 ニューヨーク株式市場のダウ平均は25日、前日比35・27ドル(0・11%)安の3万2764・65ドルで取引を終えた。同日午前に発表された1~3月期の国内総生産(GDP)改定値が上方修正されるなど、米経済の底堅さを示す明るいニュースが入ったにもかかわらず売り注文が先行した。

 投資家心理を冷え込ませているのは、債務上限引き上げ交渉の先行き不透明感だ。タイムリミットが残り1週間と迫っているにもかかわらず与野党合意のめどが立っておらず、史上初の米国債デフォルトが現実味を帯びてきた。24日には格付け大手フィッチ・レーティングスが米国を最高位の「AAA」から格下げする可能性を発表した。

 イエレン米財務長官は今月1日、上限を引き上げなければ最速で6月1日にも政府の資金繰りが行き詰まると発表。デフォルトの具体的な時期が示されたことで、投資家の不安心理が一気に強まった。ホワイトハウスと共和党の協議が行き詰まり、交渉が一時中断となった19日以降、ダウ平均は5営業日連続で下落し、1日からの下げ幅は1200ドルを超えている。

 米国債デフォルト時の保険となる金融商品「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率も上がっている。取引の多い5年物国債のCDSは18日に一時0・7%近くまで上昇し、2009年3月以来約14年ぶりの高水準をつけた。足元でも0・6%前後と年初の約3倍の高い保証料率で取引されている。

 国債市場では6月上旬ごろに満期を迎える米国債だけが売り込まれる異例の事態も発生している。政府資金が残る5月下旬までと四半期ごとの法人税収が入ってくる6月中旬以降は問題なく償還されるが、「その間は政府資金が枯渇してデフォルトが発生しやすい」との見方が強まっているためだ。

 11年夏、当時のオバマ政権と共和党の間で債務上限引き上げ交渉が難航した際も、株価下落などで金融市場は混乱した。市場では「投資家は既に偶発的な米国債デフォルトの可能性を織り込み始めた。株価は更に落ち込む可能性が高い」(大手証券)との見方が出ている。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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