可決弾劾案、「親日外交」批判を削除 最大野党代表が書き換え指示か
14日に可決された韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する2回目の弾劾訴追案は、尹氏の対日外交政策に対する批判が削除されるなど1回目から大きく書き換えられた。「弾劾事由とは無関係だ」などの指摘が国内外の専門家から出て、与党が弾劾に賛成しない理由の一つにもなりかねなかったためだ。弾劾案を提出した野党6党は、広く世論の支持を得て与党に賛成を促すためにも、党派性の強い文言は削除した方が得策と見た模様だ。
特に問題となったのは1回目の弾劾案の結論部分だ。「価値外交という美名のもとで地政学的バランスを度外視し、朝中露を敵対視し、日本中心の奇異な外交政策に固執し、東北アジアにおいて孤立を招き、戦争の危機を触発した」などと記されていた。
韓国の進歩的な野党勢力の間では、日韓関係を大きく改善させた尹氏の対日政策について批判的な見方が主流だ。尹氏の政策全般を批判する意味合いで、こうした文言を挿入したとみられる。
しかし、これについて米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)が、「日韓関係改善や日米韓の協力強化が韓国を孤立させたという見解は事実と符合しない」などと批判する米国内の専門家の声を伝え、韓国の新聞などでも広く引用された。また尹氏の戒厳令の宣布への見方とは別に、現在の南北、米中関係を見れば、韓国が日米韓の枠組みを重視すること自体は合理的と見る専門家は韓国内にも少なくない。
こうした反応を受けて、弾劾案の作成を主導する最大野党「共に民主党」は、李在明(イ・ジェミョン)代表の指示で、戒厳令の違憲性など、弾劾事由と直接関係のある内容に絞って弾劾案を作成し直したという。共に民主党の議員は「1回目は時間がない中で過去の事例の資料を集めて作成した。外交の部分はその際に、間違って入ってしまったものだ」と韓国メディアに説明している。
ただ、戒厳令を巡る1回目の弾劾案に、外交政策を巡るイデオロギー的な見方が反映されたことは、今回の事態が韓国内の保革対立と完全に切り離すことはできないことを示している。
尹氏も、12日に発表した談話で「中国のスパイが無人機(ドローン)で軍事施設などを撮影しているが、取り締まるために法律を改正しようとすると野党が邪魔をする」などと述べて、外交・安全保障問題を絡めて野党を批判していた。【ソウル福岡静哉】
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