日本人男児殺害から1年 「731」の映画始まる 反日感情に警戒

2025/09/18 20:49 

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 満州事変の発端となった柳条湖事件から94年を迎えた18日、事件が起きた中国遼寧省瀋陽市の「9・18歴史博物館」で記念式典が開かれた。反日感情が高まりやすい時期とされ、1年前には南部・広東省深圳市で日本人男児が登校中に刺されて死亡する事件が発生。中国各地の日本人学校は休校などの安全確保策を取った。

 中国は9月18日を日本に侵略を許した「国辱の日」と位置づけており、例年、各地で式典が開かれている。特に今年は「抗日戦争勝利80年」として日本の加害責任を追及するキャンペーンが強化されており、在中国日本大使館は中国に滞在する日本人に「外出時に日本語の使用を控える」などの注意喚起をしていた。

 関係者によると、中国各地の日本人学校11校のうち、深圳市の学校は18、19日を休校とし、広州市や上海市などの7校が18日をオンライン授業に切り替えて児童・生徒の登校を見合わせた。普段通り授業する学校も通学路の警備を強化したという。

 深圳の事件は2024年9月18日朝に発生。親と一緒に日本人学校に登校していた男子児童(10)が校門からわずか200メートルの路上で刃物を持った男性に襲われた。同年6月には江蘇省蘇州市でも日本人の親子が襲撃される事件も起きていた。

 その後、日本人学校では警備体制の強化が図られたが、日本人社会の不安は拭えないままだ。中国の交流サイト(SNS)では過激な「反日」投稿が後を絶たない。今年7月には再び蘇州市で、子供を連れて歩いていた日本人女性が何者かに背後から石のようなもので殴られて負傷する事件が起きている。

 経済協力を含む民間交流に影を落としており、日本政府は繰り返し再発防止やそのための情報共有を中国側に求めている。

 一方、18日には戦時中に中国人捕虜らへの人体実験を行った旧日本軍の「731部隊」を題材にした映画の上映が始まった。

 映画情報サイトによると、18日だけで興行収入は2億元(約40億円)を突破し、1日あたりの上映回数は全土で26万回以上と過去最多になったという。中国メディアは各地の映画館で涙を流しながら画面に見入る観客の姿を伝えた。

 共産党の求心力を高めるため「抗日」の歴史を強調する習近平指導部だが、対米戦略や経済立て直しのために日本との実務協力も必要としている。

 「抗日戦争」をテーマとする映画上映について、中国外務省の林剣副報道局長は18日の記者会見で「歴史をかがみとして平和を守るというメッセージを世界に送るためだ」と主張しながら「中国は開放的で包容力のある安全な国家であり、我々は日本を含む各国の人々が旅行や学習、ビジネスのために訪中するのを歓迎し、引き続き外国人の安全を守る」とも述べた。【北京・河津啓介】

毎日新聞

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