憲法記念日 護憲派と改憲派が集会 「緊急事態条項」巡る訴え目立つ

2021/05/03 19:24 

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 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で迎えた憲法記念日の3日、護憲派と改憲派はそれぞれ集会を開いた。昨年は全国が緊急事態宣言下で、今年も東京や大阪など4都府県を対象に3回目の緊急事態宣言が発令されている中での「憲法を考える日」。そうした状況もあり、今年も大規模災害時などに政府の権限を強める「緊急事態条項」創設の是非などについての訴えが目立った。

 護憲派は、東京都千代田区の国会前で「平和といのちと人権を!5・3憲法大行動」を開いた。オンライン活用を呼びかけ、動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信したが、現地にもマスク姿の多くの市民が駆けつけ、互いに距離を保ち会話を控えるよう注意しながらの開催となった。

 憲法学者で日本体育大の清水雅彦教授は「首相は(憲法改正の手続きとなる国民投票法)改正案を成立させようとしているが、急いで改憲する必要はあるのか。今、集中して取り組むべきはコロナ対策だ」と批判。江戸文化研究者で法政大前総長の田中優子さんは「憲法と自民党の改憲草案を読んで比較してほしい。自民党は『憲法改正』という言葉を使うが、改正ではなく全く異なる憲法だ。各人がどのような憲法を理想とするか、個々の考えを明確にする必要がある」と主張した。

 参加していた東京都練馬区の奥山信義さん(70)は「連休明けにも国民投票法改正案が憲法審査会で採決されそうな状況を考えると家にはいられなかった」。千葉県船橋市の笠原真弓さん(78)は「緊急事態条項が創設されれば、いろいろな権利が戦争中のように制限されてしまう懸念がある」と話した。

 大阪市北区でも「輝け憲法! 平和といのちと人権を! おおさか総がかり集会」を開催。参加者の主張は動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信され、「止めよう! 改憲発議」「命・暮らし まもれ」などのメッセージも掲げられた。

 市民団体「大阪憲法会議・共同センター」の幹事長を務める憲法学者の丹羽徹・龍谷大教授は政府の新型コロナ対策に触れ、「医療崩壊させた原因はどこにあるのか。憲法が保障する人間らしく生きる権利を実現するのが政府の責任だ」と訴えた。

 オンラインで参加した大阪府枚方市の専門学校生、谷上瑠洋(るみ)さん(19)は「学生の貧困も、国に訴えていきたい」と声を上げた。複数のアルバイトを掛け持ちしながら学費を支払っているという谷上さん。周囲には新型コロナの影響で収入が減っている学生が多いことを紹介し、「学生が学業に専念できるよう保障してほしい」と要望した。

 一方、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」など改憲を目指す団体は千代田区内で「公開憲法フォーラム」を開いた。例年は1000人規模(主催者発表)が参加するが、コロナ禍のため今回も昨年と同様にユーチューブでの配信で対応。会場内は無観客としたが、報道関係者には公開され、入場時の検温など感染対策が取られた。

 フォーラムには菅義偉首相もビデオメッセージを寄せ、国内外の問題への対応を主なテーマに登壇者が主張を展開。同会共同代表でジャーナリストの桜井よしこさんは「一番の課題は中国とどう向き合うか。良い関係を築くべきだが、尖閣諸島に公船を侵入させるなど無法な行為は受け入れられない」と指摘。日米首脳会談での共同声明に「台湾海峡の平和と安定」が明記されたことに触れ、「憲法改正なしでは、首相の約束は空証文に終わりかねない」と訴えた。

 千葉県医師会の理事でもある松本尚・日本医科大教授はコロナ対応の現状を挙げ、「日本が高い医療レベルと豊富なスタッフ・病床を持っているにもかかわらず、医療が逼迫(ひっぱく)するのは、医療の確保を『要請』しかできないからだ。人的・物的資源の運用に強制性を持たせる緊急事態条項が必要だ」と強調した。【椋田佳代、井口慎太郎、宮川佐知子】

毎日新聞

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