年収103万円の壁、石破首相「引き上げる」と明言 所信表明演説

2024/11/29 15:40 

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 石破茂首相は29日、与党が過半数割れした衆院選後初めての所信表明演説に臨んだ。少数与党に転じたことから「他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう取り組む」と語った。野党の意見を丁寧に聞く「低姿勢」をアピールし、総額13・9兆円の2024年度補正予算案の早期成立に向けて協力を呼びかけた。

 中でも意識したのが、与党と政策協議を続ける国民民主党が見直しを主張する政策だ。所得税がかかり始める「年収103万円の壁」について「25年度税制改正の中で議論し引き上げる」と表明。暫定税率の廃止を含むガソリン減税についても「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」とし、取り込む考えを示した。

 一方、企業・団体献金の廃止や選択的夫婦別姓など、立憲民主党などが求める争点には言及しなかった。

 政治改革を巡っては「誠心誠意、尽力する」と意欲を示したが、使途公開義務がない政策活動費の廃止、政治資金をチェックする第三者機関の設置、各議員に月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などの列挙にとどまった。

 外交では、日米同盟が基軸との姿勢を改めて明確にし「トランプ次期米大統領とも率直に議論し、同盟を更なる高みに引き上げたい」と意欲を語った。中国とは主張すべきことは主張した上で、両国共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」を推進し「国益に基づく現実的外交」を模索するとした。

 自衛官の充足率が9割にとどまることは「極めて深刻」との認識を示し、隊員の生活・勤務環境の改善に努めると強調。在日米軍基地の自衛隊による共同使用を進め「駐留に伴う諸問題の解決にも取り組む」とした。

 災害対応では、全国の体育館の空調整備のペースを2倍に加速すると言及し、避難所環境の改善をアピール。強盗・詐欺被害が相次ぐ匿名・流動型犯罪を「断じて許さない」として、犯罪グループの検挙徹底を約束した。

 首相は「日本全体の活力を取り戻す」として、地域産業の高付加価値化や男女の賃金格差解消に取り組むと決意を示した。半導体分野に10兆円以上の公的支援を実施し、スタートアップ支援も推進すると語った。

 憲法改正については「(国会で)国民的な議論を深めることを期待する」と述べるにとどめ、10月の所信表明の際に言及した「首相在任中の発議の実現」の文言は入らなかった。【村尾哲】

 ◇石破首相の所信表明演説 ポイント

・トランプ次期米大統領とも率直に議論し「日米同盟を更なる高みに引き上げる」と表明

・自衛官の勤務環境改善や生涯設計の施策の方向性について年内に結論

・地方への交付金を倍増。デジタル技術を活用し農林水産業、製造業、サービス業の高付加価値化を推進

・体育館の空調整備のペースを2倍に加速など、避難所の生活環境改善に最大限対応すると約束

・「闇バイト」など匿名・流動型犯罪グループの検挙徹底を一層推進

・2030年度までに人工知能(AI)・半導体分野に10兆円以上の公的支援実施。10年間で50兆円超の官民投資を実現

・25年度税制改正で「103万円の壁」を議論し「引き上げる」。ガソリン減税は「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し結論を得る」と表明

・政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などの政治改革について年内の結論を言明。企業・団体献金の見直しには触れず

毎日新聞

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