「103万円の壁」引き上げ 政府、物価上昇率を基準に控除額検討
政府は29日、所得税がかかり始める「年収103万円の壁」の見直しについて、物価上昇率を基準に控除額を引き上げる検討に入った。ただ、国民民主党は最低賃金の上昇率に基づき課税水準を178万円に引き上げることを求めている。政府は今後、与党や国民民主との協議を加速させて、引き上げ幅を決める。
政府は長らく続いてきたデフレから脱却し、足元の物価上昇への対応を念頭に控除額の引き上げを検討する。所得税の基礎控除は、歴史的に物価や所得の上昇に合わせて引き上げられてきた経緯があることも考慮する。政府関係者は「最低賃金を基準にするのは厳しい。労働生産性を上げる経済政策の色彩が強い」とする。最低賃金を基準とした控除額の引き上げは過去に例がない。また減収幅を抑えたいとの思惑もあると見られる。
物価上昇率にもさまざまな捉え方があり、具体的な引き上げ幅の議論はこれからだ。
第一生命経済研究所の試算によると、消費者物価指数(総合)は1995年と比べて、2024年は1割強の上昇になる。これを基に引き上げ幅を算出すると課税水準は116万円になる。食料品や光熱費など生活必需品を中心とした物価上昇率だと128万円、食料品のみの上昇率では140万円になる。
複数の与党関係者によると、政府側は「上昇率1割程度」を根拠にする案を示したり、ある程度の幅を持たせたりする案を示しているという。
所得税がかからない103万円の水準は、最低限の生活費に課税しない基礎控除(48万円)と、スーツ代など会社員の経費を差し引く給与所得控除(55万円)の合計からなる。
国民民主は103万円が決まった95年当時と比べて最低賃金の全国平均が24年度に1・73倍になっていることを根拠に、課税最低限を178万円に引き上げるべきだとする。政府は178万円へと引き上げると、住民税の減税分も含めて国と地方で年7兆~8兆円の税収減が生じるとしている。【杉山雄飛、高橋祐貴、小田中大、野間口陽】
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