<原発・出口なき迷走>高市首相、歴代首相より遅い福島訪問 問われる復興の本気度

2025/12/02 20:50 

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 高市早苗首相は2日、就任後初めて福島県を訪れ、東京電力福島第1原発などを視察した。2011年の東日本大震災以降、歴代の首相は就任から間を置かずに福島入りしていたが、高市首相は1カ月半遅れの訪問となった。高市首相は記者団に福島の復興に向け「責任貫徹の思いで取り組む」と強調したが、史上最悪レベルの事故を起こした東電が原発を再稼働させる動きが進み原子力政策が転換点を迎える中、その本気度が問われることになる。

 震災以降、首相が就任直後に福島を訪れることは歴代政権の慣例となっていた。野田佳彦首相は11年9月、就任6日後に福島入りした。安倍晋三首相も12年12月、就任3日後に原発を視察し、避難住民らと意見交換を実施。菅義偉、岸田文雄の両首相も政権発足から約10日後に視察した。石破茂首相は就任から2週間後に衆院選の第一声に合わせて福島入りした。ただ原発の視察は就任から約2カ月半後となった。

 高市首相の福島入りが遅れた背景には、政権発足直後に、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議への出席やトランプ米大統領の来日など外交日程が立て込んでいたことがあるとみられる。

 高市首相は視察直後の取材で「閣僚全員が復興相」と被災地重視を続けることをアピールしたが、政府内からは「首相になれば、福島は真っ先に行くものだ。事故が風化している証左だ」(経済官庁幹部)など、首相の姿勢を疑問視する声も上がる。

 福島の原発事故から15年を前に、新潟県知事が東電柏崎刈羽原発の再稼働容認を表明した。これに続き、北海道電力の泊原発3号機の再稼働も、北海道知事が容認する考えを表明しており、今後、全国で原発回帰が加速していく可能性がある。

 これまで福島の復興や原発の再稼働は「国が前面に立ち」推進していくとしてきた政府。しかし、依然として国の姿勢には被災地や原発立地地域から疑問の声も上がる。原発事故によって浮き彫りとなったにもかかわらず、置きざりのままとなっている原子力政策の問題点を検証する。

毎日新聞

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