オウム元受刑者と重ねた手紙と面会 埋まらない加害者と遺族の溝
1995年2月に起きたオウム真理教による東京・目黒公証役場事務長の監禁致死事件で、父の仮谷清志さん(当時68歳)を亡くした長男の実さん(65)は、事件に関与したとして有罪判決を受けた平田信(まこと)元幹部(59)から20通以上の手紙を受け取った。出所後には7回面会したという。
平田元幹部は逃亡を続けていたが、2011年12月31日に警視庁に出頭。拉致現場で井上嘉浩元死刑囚らを乗せた車を運転したとして逮捕監禁罪などに問われ、懲役9年の有罪判決が16年に最高裁で確定した。
実さんの元には12年1月、平田元幹部から初めて手紙が届いた。井上元死刑囚らを通じて、松本智津夫元死刑囚の指示として事件に加わるよう命じられたとし、「(清志さんの妹である)女性信者の救出と勝手に解釈した」と説明。「深くお詫(わ)び申し上げます」と記されていた。
実さんは公判で、自らも導入を訴えた被害者参加制度を使って直接質問。平田元幹部は「償い続けることを約束します」などと応じた。「事件当時のことを一生懸命に思い出そうとしていた」と誠実な印象を持った。
その後も手紙での謝罪が続いた。22年4月の出所数日前には「『罪を償った』という実感は涌(わ)いてきません」と心境を明かし、面会の希望を伝えてきた。
◇出所後、7回面会
知人を介して22年5月~25年1月に7回にわたって都内の飲食店で食事をした。いつもスーツにネクタイ姿で真面目さを感じたが、積極的に自らの話をするわけではなく、内容は印象に残っていない。
13年には、平田元幹部からの申し出で、1000万円を支払うことなどを条件に示談していた。未払い分は出所の半年後から毎月5万円ずつ支払う約束だったが、23年2月時点で247万円が未払いとなっていた。
25年2月までの2年間で毎月1万円ずつを振り込めば、残りを免除する減額を提案し、今月1日まで約束通り支払われた。25年1月17日に会った際に平田元幹部から「支払いが終わったらどうしますか」と聞かれ、「これで終わりでいいですよ」と伝えた。
◇「距離縮まらなかった」
実さんは「真面目に返済をしてくれて謝罪と償いの気持ちは伝わったが、結局は加害者と被害者遺族で、距離を縮めることはできなかった。彼とのやり取りはこれで最後にしたい」と話した。【菅健吾】
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