桃がピンチ、「ご支援を」 和歌山・紀の川がCF型ふるさと納税募る
地元が誇る桃の生産を守れ――。全国的な桃の産地として有名な和歌山県紀の川市での生産量が大幅に減っており、市とJAわかやま紀の里地域本部が協働し、生産農家を支援するクラウドファンディング(CF)型ふるさと納税を11月28日から始めた。プロジェクト名は「10年後には桃が無くなる・・!? 今ならまだ間に合います!消えゆく桃畑に、皆さまからのご支援を」。募集期間は2026年2月25日までで、目標額は750万円。
県は西日本最大の桃の収穫量を誇り、特に紀の川市は一大産地。桃山町を主産地とする有名ブランド「あら川の桃」は2023年に国の「地理的表示(GI)」保護制度に登録されている。だが、同本部管轄の「あら川の桃」の出荷量は22年の932トン(333万玉)から24年には764トン(273万玉)となり、わずか2年の間に2割近く減った。
農家の高齢化や資材高騰、酷暑による生育環境悪化など原因は多岐にわたる。24年はカメムシが暖冬で春まで生き残り、大量発生につながった。カメムシは桃の果汁を吸うため収穫量や秀品率(良い品の占める割合)が下がっており、農家の手取りに影響が出ている。
CF型ふるさと納税は使い道を具体的に示し、使途への共感を求めるのが特徴。今回の寄付金は、袋掛け用の袋を農家に配布する費用や生産に必要な資材支援などに使われる予定。袋掛けは病害虫や鳥から実を守り、日焼けや雨水を防ぎ、品質の向上につながる。
今回CF型で生産者の支援を募ったことについて、同本部販売部直売課の井谷昂介さん(35)は「消費者の方々に産地の危機感を共有していただき、現状を知ってもらうとともに、農家の方々の励みにしてもらえればと考えた」としている。
詳細な内容や寄付の方法は「ふるさとチョイス」のサイトを参照。返礼品は市特産の桃が用意されている。
◇温暖化、カメムシに悩まされ
紀の川市桃山町元で約1・4ヘクタールの桃畑を所有するJAわかやま・あら川の桃部会長の宮村邦彦さん(66)は35年間生産を続けてきたが、近年は特に温暖化や害虫対策に悩まされてきた。夏場の猛暑の影響で出荷時期が早くなり、特に時期後半になるほど果実の内部が茶色くなる高温障害が目立つようになった。また、昨年のカメムシの大発生で、製品として3割程度しか出荷できなかった農家もあったという。今回の支援の動きについては「伝統の桃作りを続けるには生産量を安定させることが必要で大変ありがたい。応援してもらえることで農家もやる気が出る」と歓迎している。【加藤敦久】
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