スマホ普及、原材料高…消えゆく「県民手帳」 富山、26年版で幕
地域住民の便利なハンドブックとして親しまれてきた「県民手帳」が苦境に立たされている。スマホによるスケジュール管理が一般化するなど、社会環境の変化に伴う「手帳離れ」が背景にある。富山県では2026年版を最後に発行をやめることになり、奈良、山口両県でも発行終了が決まった。石川、福井両県では26年版は発行されるものの、27年以降は「未定」という。【浜名晋一】
富山の手帳は同県統計協会が発行。最後の手帳ということもあり、10月の販売開始から売れ行きは好調だが増刷の予定はなく、現在は入手困難な状況という。
手帳は、予定を書き込めるカレンダーのほか、統計に対する県民の関心や理解の醸成を図ることを目的に、県内の産業や福祉などさまざまな統計データを網羅する。
「富山県の一日」と題したページには、県内での1日あたりの出生数や交通事故発生件数などの数値を分かりやすく表示。また、富山湾でとれるすしのネタをカラー写真で紹介するなど、ビジュアル重視の作りも特徴だ。
最後となる26年版では、表紙に立山の稜線(りょうせん)の絵をあしらい、「おわら風の盆」といった県を代表する祭りを紹介するなど特別仕様にした。
協会によると、確認できる最古の手帳は1957年版。最盛期の85年版では4万4000部を発行したが、2025年版と26年版は1万3000部に落ち込むなど部数を減らし、収支も悪化した。今後の需要も見通しが立たないことから、「統計普及の媒体としての役割に一区切り付いた」として発行終了を決めた。
協会の藤井孝次事務局次長は「スマホに比べ紙の手帳は見やすさなどで優れていると思うが、これも時代の変化で仕方がない」と話した。
全国で発行されている県民手帳は近年、スマホの普及や原材料費の高騰などを背景に各地で発行が困難に。協会によると、26年版は34県の発行にとどまった。奈良の発行終了決定で、近畿2府4県での発行はゼロになる。
石川、福井両県はいずれも26年版を発行したものの、石川の発行元の同県統計協会は「販売状況を見ながら」、福井の発行元の同県庁生活協同組合も「採算は合っていない」として、今後の発行は決まっていないとしている。
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