旧統一教会会長辞任、「組織的責任」明言せず 「体質変わらず」の声
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長は9日、東京都渋谷区の教団本部で記者会見を開き、同日付で辞任したと表明した。元信者らが訴える高額献金などの被害に対して「謝罪の意を込めたおわびをさせていただいたと理解していただきたい」とする一方、組織的な責任については明言を避けた。
田中氏は冒頭、辞任の理由について「継続して社会をお騒がせしてきたこと、今なお被害を訴える方々がいらっしゃることに対する道義的な立場から」と述べた。続けて「私たちの活動が一部の方々に深い心痛を与えたことは軽視できない。会長として事態を真摯(しんし)に受け止め、社会からの信頼回復に向けた一歩を踏み出すため辞任を決意した。申し訳ありません」と頭を下げた。
政府が教団の解散命令を請求した後の2023年11月に開いた会見で、田中氏は「教団として過ちがあれば謝罪しなくてはならないが、被害者も被害金額も不明確」と組織的な責任を否定し、「謝罪」という言い方を避けていた。
9日の会見では、高額献金などの被害に対する教団の組織的な責任について問われると、「組織的にしっかり対応していくことが必要だ」としつつ「教団の会長としてのおわび。組織的責任をどこまで背負うか、裁判がまだ継続していて、組織論だけで私が簡潔に述べ切ることは難しい」と明言を避けた。
旧統一教会を巡っては、東京地裁が25年3月、教団に解散を命じる決定を出した。教団側の即時抗告を受けた東京高裁の審理は11月21日に終結し、来春にも判断が示される見通し。高裁が地裁決定を支持すれば、最高裁の判断を待たずに解散命令の効力が生じ、教団の財産を清算する手続きが始まる。
高裁の審理で教団側は、元信者らが申し立てた集団調停に対応していることや、献金などの返金を求める元信者らに対する補償検討委員会を設置したことを証拠提出した。集団調停を進める全国統一教会被害対策弁護団によると、8日時点で182人に総額約36億7964万円を支払うことで調停が成立した。また、これとは別に22年度以降に元信者らに9月末時点で965件計約69億円の解決金を支払った。
田中氏は辞任の理由について、こうした高裁の審理の対応に区切りがついたこと、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件以来の教団改革により次世代への交代に道筋が付いたことも挙げた。後任には、教団のアジア大陸会長、堀正一氏が9日付で就任した。
教団による被害の救済に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮事務局長は「高額献金などの実態を中立的な第三者によって明らかにさせないままで教団の体質が変わったとは受け止められない。何についておわびしているのか、これまでも不法行為を認める判決が出て、違法行為があったことが前提の解散命令が出された。道義的な問題を超える責任を明確にしないまま終わらせるのは真摯な反省ではない」と指摘した。【宮城裕也】
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