「このおいしさ、福島では当たり前」 古民家カフェが特別ランチ
福島市大波の古民家カフェ「imoca(いもか)」が、東日本大震災・東京電力福島第1原発事故から15年となった11日、特別ランチビュッフェを始めた。大波地区は米どころだが原発事故で出荷停止に追い込まれた。同じく風評被害に苦しんできた福島の食材をふんだんに使い、復活したそのおいしさを広く知ってほしいという、初の取り組みだ。
11日。特別ランチビュッフェはインスタグラムでしか告知していなかったというが、大波の田園風景を望む店内は予約客でほぼ満席。メインディッシュのローストポークや季節野菜のサラダ、総菜に舌鼓を打っていた。
地元から足しげく通っているという60~70代の女性3人は「料理は一品一品がおいしいし、窓から見える四季の移り変わりに癒やされる。原発事故の時にはお米も作れなくなり、こんな日が来るとは思えませんでした」と感慨深げに語った。
◇元東電社員が開業
imocaは、2017年に営農支援のNPO法人「0073(おおなみ)」を設立した永井康統(やすのり)さん(65)が築約100年の古民家をリノベーションして23年3月15日にオープンした。特別ランチビュッフェは開店3周年の今月15日まで提供している。
永井さんは元東京電力社員で、福島第1原発事故で放射線量が高まった大波地区の除染を担当した。11年11月、1軒の農家が収穫した玄米から国の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出され、国内で初めて政府から出荷停止を指示された。その農家はセシウムの吸収が抑えられるカリウム肥料を使っていなかったことが原因とみられたが、風評被害は広がった。「払拭(ふっしょく)するのが自分の使命だ」と17年に退職。大波地区の米を買い取って首都圏での販売を続けてきた。
「確かに『風評被害』と呼ばれる現象はあったが、実際に大波のお米を買ってくれた人たちは『おいしかったのでまた買う』『応援しています』と言ってくれた。いまだにその正体は分からない」と永井さんは振り返る。
さらに、たまたま知り合った茨城県東海村の生産者に教えを請い、サツマイモの栽培を農家に奨励して干し芋に加工した「明星いも」を商品開発した。imocaではこれを使った創作スイーツが人気を集めている。和歌山県田辺市の南高梅の農園からは「山間部の大波では斜面で栽培すればちょうどいい」と地域ぐるみで技術指導を受け、収穫量を年々増やしている。持続可能な営農を模索し続ける。
「大波の産品は味に自信がある。これだけおいしいものが食べられるのは福島では当たり前だが、東京では当たり前じゃない」と胸を張る永井さん。「震災から15年で風評被害は減ったと言えるが、過疎化はよそより加速して進んでしまった。これからは自分たち住民の力でどう組織立って動いていけるか。それを皆で考えたい」と将来を見据える。
特別ランチビュッフェは90分制で2300円。予約はimoca(024・573・5508)へ。【錦織祐一】
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