存在も皇室入りの意思も 判然としない養子案対象の旧宮家男子
衆参両院は8日、皇族数確保に関する全体会議を衆院議長公邸で開き、「立法府の総意」のとりまとめ案を正式に各党会派に提示し、各党から意見を聴取した。13党派のうち与党や中道改革連合など7党派が、政府の有識者会議が示した①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持②旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする――の2案を「了とする」とした案におおむね賛同する姿勢を示した。一方、立憲民主党は見解を留保し、共産党などは反対した。10日に改めて全体会議を開き、最終的なとりまとめを目指す。
◇戦後離脱した旧宮家
旧宮家出身の男系男子を養子縁組して皇族とする方針は、皇位の男系継承の維持を掲げる高市早苗首相がこだわってきた。
終戦直後の皇室には昭和天皇一家、弟の秩父宮、高松宮、三笠宮のほか、傍系の11宮家があった。旧宮家とは後に皇室から離れた傍系を指しており、現在の皇室と共通の祖先は室町時代の伏見宮貞成(さだふさ)親王まで約600年さかのぼる。
戦後は連合国軍総司令部(GHQ)の占領下となり、皇室が財産上の特権を失って皇族の範囲の見直しが迫られた。一方の日本側も明治以降、皇室の適正規模の維持を目指して試行錯誤しており、傍系の離脱に大きな抵抗はなかった。
1947年10月13日の皇室会議を経て、11宮家は翌14日に皇族の身分でなくなった。直前の国会で政府は「11宮家の大人のほとんどは皇族の列を離れる希望を表明された」と答弁している。
民間人となった11宮家の人々は当初、皇族や元皇族らで作られた「菊栄親睦会」を通じて皇室と交流を続けてきた。過去には頻繁に顔を合わせる機会があったが、多くの人が集まる「大会」は2014年5月に開かれたのが最後という。
旧宮家出身者の中には皇室にゆかりのある立場にいる人もいる。ただ、一般国民として生活しており、宮内庁関係者は「今の天皇ご一家と近しい親戚づきあいが日常的にあるわけではない」と話す。一部の旧宮家は後継者がなく、既に断絶したとされる。
◇対象者の情報示されず
皇族数確保に向けた養子案が台頭する中、そもそも対象者がいるのか具体的な情報は示されていない。
与野党の全体会議があった25年3月、内閣官房参与の山崎重孝氏は「私どもが内々見ておりますと、皇統に属する11宮家の方々の男子で、まだいらっしゃる方々はいるだろう」と発言したが、根拠は明らかにしなかった。
過去の会議では男系継承を主張する識者から「4家系に未婚の男子がいる」とする発言もあった。
ただ、対象者が養子として皇室に入るかどうかの意思確認について、政府は現行の皇室典範が養子を禁じているため、「違法行為を前提とした確認はできない」としている。
宮内庁のある幹部は「宮内庁の仕事は皇室をお支えすること。一般社会で暮らしてきた旧宮家出身の方々の詳細を把握したり、調査したりする立場にない」としている。
◇活躍目立つ女性皇族
女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案では5人が対象と想定される。男性皇族の高齢化や減少に伴い、近年は女性皇族の活躍が目立つ。
皇室は現在16人で構成されており、皇室に生まれた女性は天皇家の長女愛子さま(24)▽秋篠宮家の次女佳子さま(31)▽三笠宮家当主の彬子さま(44)▽妹の瑶子さま(42)▽高円宮家の長女承子さま(40)――の5人となっている。
愛子さまは2024年春に大学を卒業された後、日本赤十字社で勤務。両陛下とともに沖縄や長崎で戦没者を慰霊したほか、東日本大震災などの被災地訪問で皇室が大切にする平和や被災者への寄り添いを実践する。
佳子さまは全日本ろうあ連盟に非常勤で勤務し、手話を公務に生かしている。ペルーやブラジルへの訪問を機に移民の歴史や日系人の暮らしへの関心を深めた。
皇室が関わってきた福祉や国際親善などに限らない多様な活躍もある。彬子さまは英国留学体験をまとめたエッセーがベストセラーになり、妹の瑶子さまはモータースポーツの振興に積極的だ。承子さまは日本ユニセフ協会に勤務し、国内外の仕事と公務を両立させてきた。
◇宮中祭祀も担い
公的な活動のみならず、皇室の私的な活動「宮中祭祀(さいし)」も成り立たない状況にある。
毎年6、12月に皇居である皇族や国民の厄災を払うことを願う「大祓(おおはらい)の儀」はかつて、男性皇族1人が代表として参列していた。だが、男性が少なくなり、14年以降は女性皇族も代表を担っている。
今の皇室は11人いる女性に対し、男性は5人。上皇さま(92)は公務から退き、弟の常陸宮さま(90)も高齢のため公務を事実上引退している。天皇陛下(66)を支える皇族として積極的に活動できる男性皇族は秋篠宮さま(60)で、成人したばかりの秋篠宮家の長男悠仁さま(19)は学業優先の日々が続いている。
女性皇族が皇室に残れば、多彩な活動を通じた皇室と国民との接点を維持できるという期待はある。ただ、宮内庁のある幹部は「国民の期待を受けながら、皇室に残る、残らないという選択肢を自由に選べる環境が整うのだろうか」と気をもむ。
宮内庁の黒田武一郎長官は5月28日の定例記者会見で、「何らかの制度改正がされた場合、その内容に即して皇室の方々のお気持ちも十分に踏まえながら、できる限りの努力をしていく」と述べている。【山田奈緒、柿崎誠】
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