釜石SW・小野選手「特別なシーズン」 震災15年も復興祈念試合

2025/12/07 10:15 

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 ラグビー・リーグワン2部の新シーズンが13日開幕する。来年5月まで半年間にわたる長丁場で、3月に東日本大震災発生15年となる東北地方唯一のリーグワン所属チーム「日本製鉄釜石シーウェイブス(釜石SW)」は地元・岩手県釜石市で「復興祈念試合」を今季も開催する。チーム一筋12年目で、ファンから「ミスター釜石」と称されるベテランWTBの小野航大選手(33)は「特別なシーズン」と意気込んでいる。

 釜石SWの前身は、1978年度から84年度にかけてラグビー日本選手権最多タイの7連覇を達成した新日鉄釜石。しかし近年は3季連続で入れ替え戦を経験し、3部降格をなんとか回避してきた。

 小野選手は昨季は故障がちで2試合、合計92分間の出場にとどまった。「惜しい試合が多かったが、2勝しかできずに最下位。相手との力の差を感じたというよりも、反則やミスなど自分たちで減らせる部分を制御できなかった」と振り返る。

 新シーズン開幕を前に「だからこそ今季は修正できると思っている。目標はトップ4(2部8チーム中4位以内)」と力を込めた。

 今季はオーストラリア人のトウタイ・ケフ氏(51)を新ヘッドコーチ(HC)に招いた。選手10人が去る一方で、新戦力6人が加入した。

 小野選手は「バーベキューやゲームを一緒にやって『まず仲良くなろう。互いを理解しよう』とチームづくりを進めた。より『ファミリー感』が強まった」と笑顔を見せた。

 福島県いわき市勿来(なこそ)地区出身で、東海大1年だった2011年3月に震災と福島第1原発事故が起きた。海の目の前にあった祖父母宅は津波で半壊した。「食料事情が悪い中、戻っても迷惑がかかる」と神奈川県内の大学合宿所にとどまり、夏にようやく帰省した。

 大学卒業と同時に釜石SW入り。「がれきが残り、海沿いの建物が無くなっていた。爪痕を目の当たりにする一方で道路整備が進み、津波で流された学校跡地で釜石鵜住居復興スタジアムの建設も始まって復興も実感した」。入団後、仮設住宅から引っ越す市民を手伝った。

 スタジアムは19年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場として18年8月に完成した。

 小野選手はこけら落としの試合で新主将としてチームを率いた。6季務めた主将を降りた後も中心選手であり続ける。身長170センチとラグビー選手としては小柄ながら「今季も僕が一番体を張って活躍したい」と言い切る。

 チームは選手45人のうち11人が東北出身。震災が発生した3月11日に近い週末に毎年開いてきた復興祈念試合では、全員が慰霊碑に献花し、黙とうをささげて試合に臨む。今季は来年3月7日に花園近鉄ライナーズと対戦する予定だ。

 小野選手は「街でよく『応援してるよ』と声をかけられ、ファンとの距離が近い。地域の人たちに愛されていると、常に感じる」と言い、「チーム一丸となって、熱い応援に応えたい」と決意している。【早川健人】

毎日新聞

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