「幸せになるため」 21年間安打を打ち続けたヤクルト青木
◇◯ヤクルト5―3広島●(2日・神宮)
日本ではヤクルト一筋。1724試合目となる自らの引退試合を前に「最後まで貫いてきたことは何ですか」と問われると青木宣親は答えた。「幸せになることですかね。ヒットを打つことで幸せになる。勝ってみんなで喜ぶと幸せになる。それが一番」。その言葉通り、多幸感あふれる一戦だった。
「1番・中堅」で先発出場し、第1打席は凡退したが、1点リードで迎えた二回2死一塁の第2打席で左前打。「最後の試合で1本ヒットが出てホッとしてます」とコメントした。六回の第4打席では右翼線二塁打。「安打製造機」の異名通り最後の試合も複数安打を刻み、日米通算2730安打で現役生活を終えた。
試合前の打撃練習で、青木は細かにスイングを調整していた。どうやったらヒットが打てるか。どうやったら打球に角度がついて、本塁打が打てるか。「職業病みたいなもの。気づいたら微調整していた。勝手に染みついてんだな」。プロ21年目、42歳の現役最年長野手は苦笑したが、その努力が生きた。
始球式の大役は、青木の長男が務めた。捕手役としてボールを受けた父は、息子と抱き合って涙した。その後、自分と同じ背番号「23」をつけた仲間たちと、最後の戦いに臨み、5―3で勝った。
試合後の引退セレモニー。映像でメッセージを寄せたイチローさんから「最後、バシッとな」と激励された後、青木は「イチローさん。バシッと決められるか分からないけど」と涙ながらにスピーチを始めた。「出会いは何事にもかえがたい大切な宝。自分の生き方は間違っていなかったと、皆さんが日々教えてくれた」と感謝した。
式典にはヤクルトファンだけでなく、多くの広島ファンも残り、ミスタースワローズを見送った。日米通算2483試合目。勝ち負けを超えたこの光景を幸せと言わずして、何と言うだろうか。【岸本悠】
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