野口英世に“20年間ありがとう” 新紙幣発行、出身地で惜別の声
約20年ぶりに新紙幣が発行された3日、日本銀行福島支店(福島市)でも新札を県内各地の金融機関に送り出す作業が行われた。銀行の両替窓口には行列ができた一方で、2004年から1000円札の「顔」を務めた福島県猪苗代町出身の細菌学者、野口英世の旧紙幣との“別れ”を惜しむ声も多かった。
この日朝、日本銀行福島支店ではパック詰めされた新紙幣が次々と現金輸送車に積み込まれていった。県内各地の金融機関に引き渡される新紙幣の額は、同日だけで約170億円になるという。
東邦銀行本店(福島市)では、午前11時から旧紙幣と新紙幣の両替をスタート。窓口には開始前から多くの市民が詰めかけ、同市の70代女性は「実際に手に取ってみるとホログラムもきれいで肖像画もりりしい。使うのがもったいなくなっちゃう」と顔をほころばせた。同市の自営業の60代男性は「野口さんともう会えないかと思うと、両替するのが惜しくなっちゃうね」と話した。
野口に代わって新たな1000円札の「顔」になる北里柴三郎は、野口が自身の伝染病研究所で働くことを許すなど、さまざまな力添えをした恩人に当たる。新紙幣の発行に合わせて企画展「野口英世と恩師北里柴三郎の絆」を開催中の野口英世記念館(猪苗代町)の森田鉄平・学芸員(48)は、「今回の新紙幣の発行は弟子から恩師へのバトンタッチ。入手できたら会場で北里の新紙幣と野口のお札を並べて来館者に見ていただきたい」と展示の準備を進めてきた。4日には二瓶盛一・猪苗代町長が「20年間ありがとう」の気持ちを込めて、野口宛の感謝状を同館に贈るという。
1915年に野口が故郷に戻った際に歓迎会が開かれた、ゆかりの宿「レイクサイドホテルみなとや」(同町)。紙幣の切り替えに合わせて素泊まり1泊1000円(1室4人利用時)の感謝キャペーンを企画した渡部英一社長(72)は「野口は地域にとって大きな存在。紙幣が変わるのは残念でならないが、次が北里さんなので野口とつながりを感じられていいかな」と話していた。
日銀は旧紙幣の1000円札の最終製造券を県内4カ所(野口英世記念会▽県▽猪苗代町▽会津若松市)に贈った。県立博物館や野口英世記念館で展示される予定。【岩間理紀】
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