コロナ禍に泣いた世代、届いた吉報 大学生に人気集まったドラフト

2024/10/24 23:38 

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 今年のプロ野球・ドラフト会議は大学生に各球団の指名が競合するなど人気が集まった。さかのぼれば今の大学4年生は、高校3年時の2020年に新型コロナウイルスで大会が中止になるなど影響を受けてアピールの場を失った世代。大学での成長が夢舞台への切符につながった。

 5球団競合の末に楽天が交渉権を獲得した明治大の宗山塁選手は、広島・広陵高3年時に夏の甲子園が中止となった。それでも主将としてチームを鼓舞し、独自大会で準優勝した。当時について「その時はもちろん悔しかったし、どう表現していいか分からない気持ちにはなった」と振り返る。

 ただ、経験を無駄にはしなかった。「甲子園が無かった分、大学野球で自分のプレーを見てもらいたい、大学でもっと頑張りたいという思いが強くなった」。明治大では入学直後の1年春から試合に出場し、大学ナンバーワン遊撃手と呼ばれるまでに成長した。東京六大学リーグで歴代8位に並ぶ通算116安打(24日時点)を放ち、打力でも存在感を示した。プロでも走攻守三拍子そろった即戦力選手として評価を上げた。

 プロ指名を実現させ、「(当時の自分に)その考え、思いは間違いではなかったということを伝えたい」と胸を張った。

 宗山と広陵高で同学年だった渡部聖弥選手(大阪商業大)も同じ思いを抱く。「甲子園があれば良かったが、無かったから成長できたところもあると思う。マイナスではなくプラスに捉えるしかない」。広角に打てる右の長距離砲として評価を上げた渡部選手は西武から2位で指名を受けた。

 4球団の指名が集まった末に中日が交渉権のくじを引き当てた関西大の金丸夢斗投手は、兵庫・神港橘高3年時に夏の全国高校選手権兵庫大会に代わる独自大会で8強入りしたが、大会はここで終了した。新型コロナによって野球部の全体練習もなくなり、近くで見ていた父・雄一さんも「本人は甲子園もないし、悔しい思いをした世代。声をかけてやるのも苦しかった」と振り返る。それでも金丸投手は、さらに高みを目指す向上心だけは失わなかった。

 ドラフト会議で指名を受けると「(プロ入りの夢を)一度は諦めかけたけど、大学4年間でしっかりと成長してプロの世界に行こうと決めていた。その夢をかなえられたことは本当にうれしい」と感慨に浸った。【円谷美晶】

毎日新聞

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