「まつ毛ダニだけじゃない!」そのニキビ、ダニのせいかも? “顔ダニ”トラブルを皮膚科専門医…
そのニキビ、ダニのせい?(写真はイメージ)
【ビフォーアフター】思春期ニキビで”顔洗ってないだろ”と言われ…”NO整形”でも驚きの変貌
■まつ毛ダニより圧倒的に多いニキビダニ患者、皮脂多い若者、男性は特に注意
――テレビでまつ毛ダニが取り上げられ、大きな話題となりました。顔に寄生するダニがいるとはビックリです。
「生まれたばかりの赤ちゃん以外、多くの人の顔の毛穴にはダニが常在しています。通常は害を及ぼすことはありませんが、トラブルを引き起こすのは過剰に増えた場合。テレビで紹介されたまつ毛ダニは、文字通りまつ毛に寄生して、増えすぎるとかゆみやまぶたの腫れ、ものもらい、場合によってはドライアイなどの原因にもなり得ます」
――まつ毛ダニによるトラブルで来院する患者さんは多いのですか?
「まつ毛ダニを見かけることは、皮膚科としては普段の臨床ではほとんどないか、見落とされることが多いというのが実感です。それよりも、顔に常在する“顔ダニ”では、ニキビの一因になるニキビダニのほうが圧倒的に患者数は多いです」
――まつ毛ダニとニキビダニは種類が違うんですか?
「同じデモデックスというカテゴリーに属しています。主に顔に生息するダニはデモデクス・フォリキュロラム、ニキビの原因となる皮脂腺など体にも広く生息するのはデモデクス・ブレビスという学名で、若干異なります。同じイヌ属であるイヌとオオカミと同じような関係です」
――なるほど。まつ毛ダニはまつ毛にいますが、ニキビダニはどこにいるのですか?
「顔に常在する顔ダニは皮脂が大好物です。ですから、皮脂の多い頬やTゾーンなど、オイリーな箇所に多いです。患者さんも、やはり新陳代謝が活発で皮脂の分泌量が多い20~40代に多く見られ、高齢者はほとんど見かけません。また女性の場合、女性ホルモンが皮脂の分泌を多少抑えてくれていますので、男性に比べてニキビダニによるトラブルは少ない印象です」
――ニキビダニの症状ですが、普通のニキビと何か違いがあるのですか?
「ダニは集ぞくする習性があるので、ニキビダニの場合は赤いポツポツが集まった状態になることが多いです。また、赤みや膿を伴う炎症を引き起こしている場合や、肌がボコボコになってしまっている場合は、ダニが増殖している可能性が高い。膿が酷いところをつまんで潰して、プレパラートに塗って顕微鏡で見ると、ダニがいるケースが多く見受けられます」
――ダニを増殖させないにはどうしたらいいのでしょう?
「同じ生活をしていても、風邪をひく人もいれば、ひかない人がいるのと同じように、一概に不潔だけが原因というわけではありません。皮脂の多い人とそうではない人でなりやすさも違いますし、ストレスや生活習慣なども影響します。カテゴリーとしては、病気みたいなものなんです。基本的には毎日洗顔し、バランスの取れた食生活、十分な睡眠を取ることが重要です」
――では、「このニキビはダニのせいかも?」と思ったら、どうケアしたらよいのでしょう?
「洗顔など、ダニの餌となる皮脂を取り除く生活を毎日続けると、だんだん減っていく可能性はあります。ただ、抗生剤や抗寄生虫薬などのお薬を使ったほうが早く治りますので、皮膚科を受診することをおすすめします。ダニはばい菌ではなく、微生物のような生き物なので、市販されている抗菌剤では効かず、医師に処方してもらうようなしっかりした抗生剤でなければ治りません」
――普通のニキビ用の薬では、ニキビダニによる肌のトラブルは治らないということですか?
「はい。市販の薬が効かないニキビができたら、ダニを疑って、早めに皮膚科を受診するといいでしょう。症状によってはオンライン診療でもお薬を処方できます。ただ、放置していても一生治らないわけではなく、やがて皮膚がしこりのように硬くゴワゴワになって、ダニの餌となる皮脂が出にくくなると、症状は落ち着いてきます。また、年齢とともに皮脂が減って、落ち着いてくる場合もあります。そうなったときには、ニキビ痕やクレーターになってしまっている可能性もありますので、やはり早めの受診が一番だと思います」
――誰の顔にもダニがいるとはいえ、肌トラブルの原因になる可能性もあるわけですよね。何より自分の顔にダニがいるのは気持ち悪いし、駆除することはできないのですか?
「皮膚にはブドウ球菌などいろいろな微生物や菌がバランスを保ちながら存在していて、顔ダニもそのひとつ。腸内の善玉菌が悪玉菌の増殖を抑えて腸の環境を整えてくれるのと同じように、顔ダニも人体と共生してさまざまな役割を果たしています。通常は無害なので、いて当たり前、決して絶対悪とは考えないでください」
――必要以上に駆除することもないんですね。
「皮膚に存在する常在菌を殺すために、火であぶるピーリングをしてほしいと言う人、抗生剤を飲みまくっている人、足に水虫がいたからカビキラーをかけていたら皮膚が真っ赤にただれてしまった人など、たまに極端な方がいらっしゃいます。くれぐれも自己流で判断したり対処するのはやめて、気になる症状が出たら専門医に相談してください」
【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。
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