日本初のシネコン、“スター・ウォーズの聖地”イオンシネマ海老名が閉館、33年の歴史に幕 「…

2026/05/18 07:42 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

イオンシネマ海老名が閉館、『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』上映後にクロージングセレモニーを開催 (C)ORICON NewS inc.

 日本初のシネマコンプレックスが、“スター・ウォーズの聖地”として最後の日を迎えた――。

【画像】この記事に関連するそのほかの写真

 5月17日、神奈川県海老名市の「イオンシネマ海老名」が営業最終日を迎え、33年の歴史に幕を下ろした。1993年、日本初のシネコンとして誕生し(当初はワーナー・マイカル・シネマズ 海老名)、国内初のTHX認定シアター(スクリーン7)を擁した同館。映画ファンにとって“特別な劇場”だった場所へ、この日、多くの人々が別れを告げるため集まった。

 最終日の館内は、朝から異様な熱気に包まれていた。『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』や『プラダを着た悪魔2』などの最新作から、『KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ』の応援上映まで、ほとんどの作品がチケット完売の盛況ぶり。ロビーは人で埋め尽くされ、ライトセーバーなどを持った「スター・ウォーズ」ファンや「KING OF PRISM」ファンの姿が目立った。

 特に注目を集めたのが、4月24日から実施されていた「スター・ウォーズ」シリーズ全作品のTHX上映だ。劇場だけでなく、母店のイオン海老名店内にも“海老名スター・ウォーズロード”として装飾され、ショッピングセンター全体が銀河の世界観に染まっていた。

 5月16日から17日にかけては、時系列順にシリーズ全9作、25時間に及ぶ“オールナイト一気観上映”も敢行。25人もの完走者がいて、「海老名THX-SW完走ライセンス」が贈られた。

 最終上映となった『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』上映前には、観客全員で「May the Force be with you!(フォースと共にあらんことを)」を唱和。オープニングのテーマ曲とともにロゴが映し出されると、場内からは自然発生的に拍手と歓声が湧き起こった。

 上映後にはクロージングセレモニーを実施。加藤支配人をはじめ、近隣のイオンシネマ支配人たちが登壇し、劇場への感謝を語った。

 イオンシネマ港北ニュータウンの清水支配人は、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)』の名言「No one’s ever really gone(本当に失われるものなんてない)」を引用し、「海老名と皆さんがつないだ絆は、これからの神奈川の劇場、そして全国のイオンシネマの絆になっていくと思っています」と語り、会場から大きな拍手が送られた。

 そしてこの日、観客を驚かせた“サプライズ登壇”もあった。

 加藤支配人が「イオンシネマ海老名を語るうえで欠かせない存在」として呼び込んだのは、“永遠の宿敵であり、戦友”TOHOシネマズ海老名の石黒支配人だった。ライバル館の支配人の登場に、客席からは「今回は『スター・ウォーズ』上映、譲ってくれてありがとう!」という声も飛び交い、会場は和やかな空気に包まれた。

 石黒支配人は「イオンシネマ海老名様は、私たちにとって常に背中を追いかけ、切磋琢磨する最高のライバルでした」と語り、「週末になると、両館の間をパンフレットやグッズを抱えた観客たちが行き交う――そんな光景こそが、“映画の街・海老名”の象徴でした」と振り返った。

 さらに、イオンシネマ海老名の閉館を“映画のエンドロール”になぞらえながら、こう続けた。

 「普通、映画のエンドロールというのは、壮大な音楽とともに現実へ引き戻されるような、時に不安な気持ちになることもあります。でも、『イオンシネマ海老名』という映画は違います。皆さまが心に根付かせてきた“シネコンで映画を見る喜び”は、これからも永遠に残り続けるでしょう」

 そして最後に、「この街から映画の灯は絶やしません。それが、共に走り続けた同志としての約束です」と力強く宣言。ライバル館同士の支配人が握手を交わす光景に、観客からも大きな拍手が送られた。

 一方、加藤支配人は、閉館を前に観客へ“3つのお願い”を語った。最初に訴えたのは、「“映画館で映画を観る”という体験を、これからも続けてほしい」ということ。

 「通っていた映画館がなくなると、“映画館で映画を観る習慣”そのものがなくなってしまうこともある」と語り、「映画はたくさんの人の思いが詰まって作られている。だからこそ、大きなスクリーンと大きな音で観てほしい」と呼びかけ、2つ目の“お願い”として、近隣のイオンシネマへの来場を促した。

 そして、“3つ目のお願い”が、会場の空気を大きく揺らした。「これはまだ何も決まっていません。完全に私の希望です。でも、イオンシネマ海老名から始まったこの物語を、ここで終わらせたくありません。私は“続編”を観たい。もし再び、この海老名の地にイオンシネマが戻ってきたなら――。その時は、ここにいる皆さん全員と、新しい劇場ロビーで再会したい。その時はTOHOシネマズさんとも、また良きライバルとして競い合えたらと思っています」と思いを伝えた。

 最後は、ライトセーバーやスマホの光が一斉に揺れる中、加藤支配人と観客との掛け合いで「May the Movie!」「Be with you!」と、“映画館愛”に満ちた叫びで締めくくられた。

 しかし、熱狂はそれで終わりではなかった。

スクリーン7を出た観客が目にしたのは、階下のロビーを人々が埋め尽くしてる光景だった。最終上映の観客を最後の一人まで“お見送り”。閉館の瞬間まで、別れを惜しむ空気に包まれていた。

 イオン海老名店の閉店時間5分前の午後5時55分、店舗側のシャッターが静かに下ろされた。すべての観客が専用出口から退館したことを確認した加藤支配人と副支配人は入口で深々と一礼。それでも建物の外には、最後まで立ち去れない人々の姿が残り続けていた。

 東京・世田谷から駆けつけた60代男性は、“日本初のシネコン”誕生の衝撃をリアルタイムで体験した一人だった。「『ジュラシック・パーク』を海老名で観た時、“全然別次元の音だ”と衝撃を受けました」と振り返り、それ以来、大作映画が公開されるたび、多少遠くても海老名まで足を運んでいたという。近年は都内にも高品質なシアターが増え、足が遠のいていたものの、閉館を知り、ゴールデンウィーク中から『スター・ウォーズ』関連作品を鑑賞するため何度も劇場へ通った。「人気の映画館って、最後は盛り上がるものなんです。でも、今日の海老名は“別格”だった気がします」と話していた。

 横浜市と川崎市から訪れた30代女性2人組は、“エビプリ”ファンとして最後の日を見届けた。“エビプリ”とは、「KING OF PRISM」シリーズをイオンシネマ海老名で観ることを指すファンの呼称。

 「『KING OF PRISM』は応援上映文化の先駆けみたいな作品なんですが、イオンシネマ海老名は2017年頃から上映にすごく力を入れてくれていて、ファンの間では“聖地”のような存在でした。最終日にも上映してくれて、みんな本当に感謝しています」と、劇場とファンの強い信頼関係をうかがわせた。

 「30分以内で来られるので、まさに地元の映画館です」と語る厚木市在住の女性は、「子どもが小さかった頃から通っていて、もう10年以上来ています。イオン併設なので、子連れだと本当に通いやすかったんです。映画を観たあと、スーパーでネギや卵を1000円分くらい買うと、駐車場の無料時間が延びるんですよ(笑)」と、日常に溶け込んだ思い出を語ってくれた。

 この日、母店であるイオン海老名店も建て替えのため46年の歴史に幕を下ろした。
ORICON NEWS

エンタメ