ジュエリー紹介中に鶏の鳴き声? 日本初の買い物専門「ショップチャンネル」開局から30年、生…
30周年を迎えたショップチャンネル

【画像】24時間リアルタイムに購入状況がわかるショップチャンネル
◆安さではなく“面白さ”と“語れるストーリー”という付加価値を大切にしてきた30年
――30年前の開局当時と、動画配信サービスなど多様なメディアが台頭している現在とで、ターゲット層や購買の傾向に変化はありますか?
【西塚瑞穂さん】 実は本質的な部分はあまり変わっていません。このビジネスモデルはアメリカのケーブルテレビ網から始まりました。日本では富裕層エリアからケーブルテレビが敷設された歴史があり、当初は百貨店の外商を利用するような奥さま方が中心でした。現在でも、当社の商品平均価格は約7000円と、百貨店やセレクトショップに近い水準です。
――単にモノを買うだけでなく、お客さまはショップチャンネルのサービスにどのような価値を求めているのでしょうか。
【西塚瑞穂さん】 私たちが30年間大切にしているのは、安さではなく「その商品の本質的な面白さ」や「語れるストーリー」という付加価値です。例えば、ノンフィルターで少し濁っているオリーブオイルを販売する際、「ポリフェノールが多くて美味しいのよ」と友人や家族にうんちくを語りたくなるような情報を一緒にお届けします。喜びを共有できる価値を提供し続けている点は、今も昔も変わりません。
――若い世代が消費の原動力となる時代ですが、若年層の取り込みや新規ターゲット層へのアプローチはどのように考えていますか?
【西塚瑞穂さん】 最近は「ショップチャンネル2世、3世」と呼ばれるお客さまが生まれています。ご実家のお母さまがいつも当番組で買っている化粧品などをシェアしてもらい、娘さんがその良さに気づいてご自身でもネット注文する、といった具合に、親から子へ世代を超えて広がっています。
◆「テレビショッピング=胡散臭い」、世の中の漠然としたイメージを覆す品質保持への想い
――親から子への自然な広がりに加え、新しい若年層に対してはどのようなアプローチをしているのでしょうか? 具体的にどのようなデジタル戦略や施策を展開されているのですか?
【西塚瑞穂さん】 テレビ、デジタル、リアルの3つの接点でお客さまと触れ合う戦略を推進しています。ライブ番組観覧やお友達・ご家族同伴のリアルイベントなどに注力するとともに、デジタル面ではWeb広告やeCRMで先進的な取組みを行うことで、EC業界でも注目いただいています。また、売上予測にAIを活用するなど社内業務のデジタル化を進める一方で、売り切れた場合の現場のアナログな対応策も同時に大切にしています。
さらにテレビを観ない層に向けては、SNS広告を活用した新規事業「ソーシャルコマース事業」を立ち上げ、ホームグッズをメインに扱う「うちのね、」や美容系商品を中心とした「CanauBi」と、商品カテゴリーに特化したサイトで集客しています。
――テレビショッピングというと、世間には「胡散臭い」といった漠然としたイメージを持つ人もいると思います。そうしたイメージを払拭し、品質を保つためにどのような工夫をされていますか?
【西塚瑞穂さん】 その怪しさを払拭するため、各カテゴリーの専属バイヤーが商品を厳選しています。選ぶ基準は単に売れ筋かどうかではなく、「ライブで1時間語るに足るこだわりやストーリーがあるか」です。例えば、当社で大ヒットしている粉洗剤「ハイブリッド浄」は、業務用を家庭用として商品化したものです。パッケージは素朴で無香料ですが、酵素の力で汚れを落とし、環境にも優しいという「知る人ぞ知る名品」です。こうした商品の良さを伝えるのが私たちの強みです。
――ストーリーのある魅力的な商品を厳選する一方で、それらが本当に安心・安全なものかという「品質の担保」や「信頼性の確保」については、どのような基準を設けているのでしょうか?
【西塚瑞穂さん】 当社は品質審査が非常に厳格で、お取引先からは「ショップチャンネルの審査を通ったなら安心」と言われるほどです。また返品をご希望の場合、商品到着後30日以内に発送いただいたものを受け付ける方針をとっています(※一部商品を除く)。質の高い番組制作を継続し、ネット通販市場での安易な価格競争を避けて、商品の丁寧な説明と納得感のある購入を重視することで、ビジネスの長期的な健全化を目指しています。
――コロナ禍では商品の入荷遅れやスタジオの感染対策などで、一時的に放送時間を短縮される厳しい時期があったと思います。そこから得た気づきや、改めて24時間生放送の意義を感じたエピソードはありますか?
【西塚瑞穂さん】 ライブ放送を短縮した時期は、お客さまから「楽しみにしているのに」というお声を多くいただきました。その後、「深夜の放送は録画でいいのでは?」という意見もあった中、思い切って24時間生放送に戻したところ、全体の売り上げがぐんと上がったのです。コロナ禍で広がった在宅勤務や、深夜に授乳で起きている子育て世代など、昼夜問わず視聴される背景があると感じています。当番組には過剰な演出音や音楽がなく、生身の人間がリアルタイムでポジティブな会話をしています。これがラジオのような役割を果たし、同じ時間を共有して明るい気持ちになれるという「生放送の強さ」を再認識しました。
――「深夜帯に一体誰が買っているの?」と疑問に思う方も多いと思いますが、実際のところ深夜の購買力はどうなのでしょうか?
【西塚瑞穂さん】 深夜帯の購買力は非常に高いです。特に深夜0時は、1日の中で最も注目される時間帯で、「ショップスターバリュー」という一番の目玉商品を投入し、実際にご注文が殺到します。また、画面にリアルタイムでオーダー数が表示されるのですが、「行列ができているラーメン屋に並びたくなる」のと同じ心理で、数字がリアルタイムで表示されることが安心感につながり、結果として購入につながっています。双方向のコミュニケーションを通じて、深夜でも熱量の高い番組が作れているからこその結果です。
◆台本や事前のリハーサルはなし、厳選されたキャストとスタッフの掛け合い
――1時間を飽きさせずに、しかも双方向で番組を進行するには非常に高いスキルが求められると思います。出演者のキャスティングや番組の進行において、特徴的なルールなどはあるのでしょうか?
【西塚瑞穂さん】 ゲストであるメーカーの代表者の方を選ぶ際、喋りの上手さや知名度ではなく「その商品に強い思いを持つ経営者クラスの方」を基準にしています。ご自身の血と汗と涙のストーリーがあるので、本番で緊張しても、商品への思いや魅力をしっかり語っていただけます。そのため、例えば『アマニ油配合サプリメント』が、1日で7万セット以上という販売実績を叩き出すこともできるのです。
――台本はあるのでしょうか?
【西塚瑞穂さん】 台本や事前のリハーサルは基本的にありません。生放送中は、1時間の枠内で15分~20分ごとにトークを1回転させます。裏側にいるセールスプロデューサーが視聴者の反応や売れ行きを見て、「今のデモで注文が伸びたからもう一度」というように指示を出し、柔軟に調整しながら進行しています。
――生放送中に想定より早く商品が売り切れてしまい、放送枠が余ってしまった場合はどう対応するのですか?
【西塚瑞穂さん】 予想外のスピードで完売することがあっても、画面を砂嵐にするわけにはいきません。そのためバックアップの商品は二重三重に構えています。売り切れた瞬間に現場のスタッフがセットを素早く入れ替え、残されたキャストが瞬時に頭を切り替えて次の商品を紹介します。この臨機応変な対応は、現場のチーム力の賜物です。
◆ハプニングすらも“ネタ”にする…生放送における信頼構築と炎上リスク管理の実践とは?
――生放送ならではの予期せぬハプニングやデモの失敗など、過去のピンチをどう乗り越えてきたのでしょうか?
【西塚瑞穂さん】 過去には、ジュエリーの紹介中に次の番組で紹介する「烏骨鶏カステラ」の鶏の鳴き声がスタジオに響きわたり、キャストが「爽やかな朝ですね」とアドリブで乗り切りました。またデモで一旦は失敗しても、「何がいけなかったのか」をすぐに確認して、ゲストさまのアドバイスも交えながら次のデモに活かします。
――生放送ならではのハプニングですね。これまでで最大の失敗は?
【西塚瑞穂さん】 一番驚いたのは、創業期に「割れないガラスのボウル」をガンガン叩いて見せたら割れてしまった時です。社員はもちろん、お客さまもヒヤッとされたと思いますが、逆に「あそこまでするなんて、よっぽど自信があったのね」と注文が殺到しました。生放送だからこその「嘘のなさ」が、逆に好循環を生んでいます。
――ちょっとしたことで炎上してしまう現代において、トラブルが起きても炎上せず、逆にお客さまから信頼を得られる極意とは何でしょうか?
【西塚瑞穂さん】 当番組での失敗やハプニングはあくまでも商品の良さをありのままに誠実にお伝えしようとする中で起こるもので、誰かを傷つけるような内容ではないことが理由の1つかもしれません。また、お客さまとの信頼関係がしっかり構築されていることが大きいと思われます。生放送ですから、トラブルが起こっても雲隠れすることはできません。リアルタイムでの誠実な対応の繰り返しが、結果的にお客さまの信頼獲得に繋がっています。制作側の現場に「お客さま視点」が叩き込まれているからこそ、今のショップチャンネルがあるのだと思います。
(文/磯部正和)
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