織田裕二、“走れない刑事”で魅せる新境地 これまでにない期待感の挑戦「こんな作品を僕は観た…
テレビ朝日系ドラマプレミアム『ダブルエッジ~甦った男』で主演を務める織田裕二(C)ORICON NewS inc.

【写真】車いすから落ち…地面を這いつくばる織田裕二
本インタビューでは、車椅子の猛特訓や撮影現場で直面したリアルな壁、そしてハンディキャップを持つ役を通じて気づかされた「社会への優しい視点」を告白。さらに、今なお根強い人気を誇る青島俊作という存在への現在のスタンスまで、円熟味を増した役者・織田裕二の“現在地”に迫る。
■車椅子で挑んだ刑事もの「新しいものができるんじゃないかなという期待」
織田裕二の原点といえば、やはり縦横無尽に現場を駆け巡る圧倒的なエネルギーだろう。かつて日本中に社会現象を巻き起こした『踊る大捜査線』の青島俊作も、常に現場の最前線を走ってきた。しかし、今回演じる郡司孝介は、容疑者に凶器で刺されたことで車椅子生活を余儀なくされ、所轄へと異動になった男だ。直近でも重厚な人間ドラマへの出演が続く織田だが、今回のオファーにはこれまでにない「期待感」を感じたという。
「今回、ほぼ車椅子です。かなり芝居が制限される。歩けないし、走れない。『えっ、じゃあどうやって犯人を取り押さえるの?』『それはしなくていいのかな?』といろいろ考えました。常にやっている刑事ドラマで、こんな作品を僕は観たことがない。多様性だという時代の中で、そんな刑事はどういうドラマになるんだろうかと。新しいものができるんじゃないかなという期待感でお引き受けしました」
若い頃は、「やりたいこと」よりも「やっちゃいけないこと」を重視していたという織田。「やっちゃいけないことじゃなければ、何でもチャレンジしてみる。そうすると、それが次の武器になっていく」という信念を持つ。
本作でもチャレンジングな姿勢でオファーを受けたが、これまで経験したことのない「走れない刑事」という役どころで、実際の撮影現場では今までにない物理的な壁にもぶつかった。
「現場に行くのも一苦労なんですよね。現場が平らなところならいいですけど、ちょっと河原に行くと、全然車椅子で走れないんですよ。こんなに動けないものかっていうのは改めて自分でやってみて思いました。あとは誰かに車椅子を押してもらうのが、最初はこんなに怖いものだとは思わなかったですね」
そんな制限だらけの状況の中で、車椅子の前輪を浮かせる「ウィリー」の習得が必須だった。段差を乗り越えるための技術として「これができないと話にならない」のだという。
織田は「練習会に呼ばれてやってみたら、最初はバタンバタン倒れるわけですよ」と苦笑い。それでも早めにコツをつかんだという織田だが「(車椅子を)家に持ち帰って、そこからずーっとこうやって練習してました。外でも自主練をやってて。できた時はちょっとうれしかったですね」と笑顔を見せる。もし本番で失敗してNGを出せば、共演する小野花梨ら相手の役者に失礼になると役者魂を見せ、見事に乗りこなすシーンを成立させた。
ちなみに、車椅子が熱くなるほどの夏ロケに「もう断言していいですけど、この作品が最後の夏の作品です。暑すぎてもう夏のロケは無理(笑)」と過酷さも明かしていた。
■本作を通じて気づいた社会への目線「自分で体験して気づきました」
本作は、車椅子の刑事・郡司が、小野演じるASD(自閉スペクトラム症)の財務捜査官・阿久都華瑠の才能を見出しタッグを組むことになる。織田演じる郡司は、ハンディキャップを背負ったことで、周囲や社会に対するマインドに大きな変化が生まれたのではないかと語る。
「自分がハンデを背負ったことによって、ASDの彼女を見た時に、若い頃だったら『使えない』の一言で済ませそうなのに、『いや、この子は普通じゃない何かを持っている』っていうところまで考えられる。そこが郡司さんの人としての成長だったのかなって思うんです」
その考えは、役柄だけでなく織田自身の私生活や、現代社会のあり方への視点にも深くリンクしていった。
「自分が怪我したり何か病気になったりすることによって見えないものが見えたりとか、そういう人に対しての接し方が変わったりとかっていうのはあるじゃないですか。そうやってだんだん許容量が増えていったり、優しくなれたりとかっていうのはあると思うんですけど、そういうところが、本作で押し付けがましくなく伝わればいいかなって思います」
本作のあるシーンでも、織田自身がハッとさせられる瞬間があったという。
「今どんどん社会が優しくなってきて、身障者用駐車場なんて大体どこにもあるじゃないですか。でも、そこに身障者以外の人が車を停めないようにパイロン(三角コーン)が立ってたりする。身障者の人は、それをどかさないと自分の車を止められないんですけど、そのためには車を一度降りて、車椅子出して、そのパイロンどけて、また車椅子をしまって、駐車して…とすごく大変で。改めて自分で体験して気づきました」
■「被っちゃってもいい」受け入れている“青島俊作”という存在
インタビューの最後、織田にとって切っても切り離せない『踊る大捜査線』の青島俊作という存在について、別の“刑事役”を演じるにあたってどう意識しているのかを尋ねた。
「無理に青島と切り離そうと意識して演じてないですね。むしろ『青島と被っちゃってもいいや』ぐらいのつもり(笑)。彼(郡司)には家庭があって、家には奥さんがいて、息子もいるわけです。青島は独身だしまったく違う。でも“If”じゃないけど、もし青島が結婚してたらこんな感じかなって感じる人がいてもいいんじゃないかな。『青島にしよう』という気持ちはまったくないけど、結果、そうなっちゃったって別に構わないと思っていました」
過去の偉大なキャラクターを拒絶するでもなく、観る人の感じ方を受け入れる。それこそが、今の織田裕二が到達した圧倒的な許容量であり、年齢を重ねたからこその役者としての器の大きさなのかもしれない。
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