「思いくみ取った判決を」遺族が意見陳述 時速194キロで死亡事故
大分市で2021年、時速194キロで車を運転して衝突死亡事故を起こした男性被告(23)に対し、大分地検が自動車運転処罰法違反(危険運転致死)にあたるとして懲役12年を求刑した裁判員裁判。大分地裁(辛島靖崇裁判長)の15日の公判では、亡くなった小柳憲さん(当時50歳)の姉(次女)が「(弟は)右折していただけ。これほど理不尽なことがあってよいのか」と悲痛な思いを語り、裁判官らに「弟の無念さや遺族の思いをくみ取った判決を下してほしい」と求めた。
起訴状などによると、被告は21年2月9日午後11時ごろ、同市の県道交差点で、法定速度が時速60キロのところ、時速194キロで直進。対向車線から右折してきた小柳さん運転の車に衝突し、出血性ショックで死亡させたとしている。
意見陳述した次女は時折声を詰まらせながら、事故後に病院で遺体と対面した時の様子を「首の後ろあたりに血がにじんでいた。安らかな顔をしており、苦しんでいなければよいと思った」と振り返った。
事故を巡っては、検察側が当初、被告を同法違反(過失致死)で在宅起訴したが、反発する遺族らの署名活動などを受け、危険運転致死に訴因変更する経緯をたどった。次女が「過失致死で起訴と知り、おかしいと思った。長女が先頭に立って闘うといい、私と母も決意した」と振り返ると、法廷内で聞いていた長女の長文恵さん(58)も涙を拭った。
紺色のスーツに白のシャツ姿で出廷した被告は、これまでの公判で時速194キロで運転した理由を「マフラーやエンジンの音、加速する感覚を感じて、心の中でワクワクする気持ちがあった」などと発言し、衝突した衝撃で気を失い、事故の瞬間の記憶はないとも述べた。これに対し、次女は「被告には被害者の未来を一瞬で奪ったことを分かってほしい」と語気を強めた。
被告はその間、辛島裁判長らに向かって話す次女を真っすぐ見つめていた。最後に辛島裁判長から言いたいことはあるかと問われると「これからも小柳憲さまのご冥福をお祈りし続けます。ご遺族には、大切なご家族の命を奪ってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです」などとゆっくりと話した。【神山恵、山口泰輝】
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