「はじめチョロチョロ…」 あの名言、なぜコメがおいしく炊ける?

2026/10/14 16:10 

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 「はじめチョロチョロ 中パッパ ぶつぶつ言う頃火を引いて 一握りのわら燃やし 赤子泣くとも蓋(ふた)とるな」

 食欲の秋、収穫の秋。キャンプに参加し、飯ごうを使ってコメを炊く際、こう言われた人も多いのではないか。なぜ、おいしく炊けるのか。

 ◇科学的にも裏付け

 この言葉は、江戸時代には市民の間で定着していたとされる。当時は炊飯器がなく「かまど」にまきをくべ、火力は手で調節しながら炊いていた。

 「先人の経験から編み出された言葉だが、手順が明確で覚えやすく、科学的にも裏付けられている。今も通じる名言」。長年、炊飯器を開発しているパナソニックの加古さおり上級主幹技師は力説する。

 コメの甘みを引き出す酵素(アミラーゼ)は40~50度で最も活発に働く。最初に「チョロチョロ」と火をゆっくりと加え始めることで、お米が最大限に甘くなる時間を稼ぐ。

 沸騰したら一転、火の粉が舞うほどの強火にする。100度以上に保つことで、コメはふっくらと粘りのある状態に変化する。これが「ぶつぶつ言う頃火を引いて」に当たる。

 最後の「一握りのわら燃やし 赤子泣くとも蓋とるな」は蒸らしの工程だ。ここで蓋を開けると、釜の中の温度が急に下がり、コメに芯が残ったり、その表面に水分が付いてベタついたりする。

 赤ちゃんが泣いても注意をそらさないように求めたのは、日本人のコメに対する愛着とも言えそうだ。

 一方で、長時間の家事を強いる課題があったが、1955年に自動電気炊飯器が登場。その後も熱源をガスや電磁誘導加熱(IH)にするなど、さまざまな改良と工夫が続く。

 ◇最適な炊き方は…

 現在、家電メーカーは多様化する消費者の嗜好(しこう)に応えることに注力する。

 コシヒカリとササニシキが市場を圧倒する時代もあったが、今では約940産地銘柄が流通し、それぞれの風味や含有水分量に違いがある。

 健康志向も高まり、玄米や雑穀米を選ぶ消費者は多い。これまでの均一の炊き方では、おいしさを維持することが難しくなっている。

 パナソニックは7項目(外観、甘み、うまみ、粘り、硬さ・弾力、触感、香り)のおいしさ指標を策定。銘柄やコメの状態を問わず、その指標値が高くなる条件「沸騰時の炊飯器内圧力が1・1~1・2気圧」などを突き止めた。

 そこで、赤外線センサーで釜の中の圧力や温度、コメの状態などを検知し、用意した約9600通りから最適な炊き方を人工知能(AI)が選ぶように工夫した炊飯器を開発した。

 同社は6月の美味技術学会シンポジウムで、これらの成果を発表した。加古さんは「これからもコメは主食であり、人々には炊きたてへのこだわりがある。おいしさの追求にゴールはありません」と話している。【田中泰義】

毎日新聞

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