梅雨の“髪のうねり”悩み…SNSの“裏ワザ”がヒントに?『デオコ』開発者が「業界の常識」覆…

2026/06/29 09:10 

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髪のうねり戻りに悩む女性へ…SNSの噂ヒントに開発者が奮闘(写真はイメージ)

 最近、SNSでは商品の“意外な使い方”が拡散され、メーカー側が注意喚起を行う事例が増えている。注目は浴びても、意図しない使用法は思わぬ影響や危険を生む可能性があるため、メーカーとしては悩ましいところだ。だがそんな中、“ユニークなクチコミ”をあえて大真面目に受け止め、大ヒットへと繋げた異色の企業があった。ヘアケアのヒットブランド『Gyutto(ギュット)』新作開発の舞台裏に迫る。

【画像】コスメ大賞ヘアケア部門を受賞した『ギュット』ブランド第1弾

■『肌ラボは髪にもいい?』意外な噂がヒントに、ヒットシリーズ第2弾誕生の背景

 昨年発売され、「日経TRENDY×日経Woman 2025コスメ大賞(ヘアケア部門)」を受賞したロート製薬『ギュット コルセットヘアマスク』。発売直後から大きな反響を得て、計画比の4倍もの販売数を達成し、幅広い年代から支持を得た。そしてこのほど、同ブランドから『ギュット コルセットヘアミルク』が発表された。

 このヘアミルク誕生のきっかけは、同社の営業部がSNSや店頭などで見つけた、とあるクチコミだったという。「スキンケア商品の『肌ラボ』を髪に塗ると、なぜか髪が自然に落ち着いて指通りがよくなる」という声が、1人だけではなく複数から上がっていたというのだ。だが、なぜそんな変化が起きるのか? 開発部の平塚裕実さんは、「営業部から、『本当に髪にいいんですか?』『髪の何にいいんですか!?』と聞かれたものの、科学的なロジックを説明できなかった」と当時を振り返り、苦笑いする。

 もちろん、商品ごとに指定された用法・用量を守ることは大原則。ロート製薬も、本来の用途と異なる使い方では安全性を保証できないため、注意喚起を行ってきた。しかし『肌ラボ』に関しては、ヒアルロン酸をキー成分とする化粧水であり、「全身に使える」ことを公式HPで謳ってもいた。

 とはいえ、メーカーが想定していたのはあくまで保湿目的で、指通りがよくなるとは思ってもいなかったそう。それでも、SNSの噂を単にスルーするのではなく、「説明がつかないからこそ、うやむやにしてはいけない。実験してみよう!」と、開発陣の研究魂に一気に火が付いたという。

 そもそも、「髪の毛自体にはヒアルロン酸が存在しないため、ヘアケア研究においてヒアルロン酸は完全にノーマーク」というのが業界の“常識”。さらに「一般的なヒアルロン酸は分子量が大きく、髪の内部には浸透しない」という科学的な認識もあった。そのため、「髪の内部に浸透し、髪に影響を与えるわけがない」と、それまで開発陣の誰もが考えていたのだ。

 従来の“常識”に挑む研究をスタートする下地となったのが、ヒアルロン酸への強いこだわりだった。目薬の会社として知られる同社は、目の研究を通じて、角膜細胞の自然治癒力を高めるヒアルロン酸に長年着目。2003年頃からはスキンケアにおける作用研究もいち早くスタートさせるなど、独自の知見を積み重ねていたのだ。

 そんな疑問やこだわりから、平塚さんはヒアルロン酸と毛髪の研究に没頭。社内にある分子量や構造の異なるたくさんのヒアルロン酸を集め、毛髪に塗っては乾かす地道な実験を一つずつ繰り返したそうだ。

 ヒアルロン酸は肌に塗ればモチモチするが、髪に塗るとベタつきやすい。その中で「ヒアルロン酸カリウム」という成分が、使用感が良く、ダメージによる髪のうねりを補修することで扱いやすく素直な髪に導く製剤が作れる可能性を持つことが判明。しかし、それを証明する文献はどこにもない。半信半疑だった開発陣は、仙台市にある3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(以下、ナノテラス)へと出向いた。髪がうねる原因や、ヒアルロン酸カリウムが毛髪内部へもたらす効果など、メカニズムの解析に取り組んだという。

 夜を徹した地道な作業だが、平塚さんはその時間を「とても楽しかった」と振り返る。

「誰も解明していない事実を今、自分たちが暴こうとしている。その知りたい欲求がとにかく大きくて、眠さなどよりワクワク感のほうが勝っていました(笑)。あの時間はとてもエキサイティングだったことが強く印象に残っています」

 こうして、ヒアルロン酸カリウムが髪をベタつかせずに内部へ浸透、ユーザーの悩みにアプローチできるメカニズムを確認。そのときの喜びを、平塚さんは「ユーザーのお声は開発陣にとってすごく貴重だと改めて感じました。我々にとってまさかのご意見からメカニズムを解明できたことは、まさに“棚ボタ”でした」 と語る。

■大ヒット作『デオコ』開発者が再び快挙、「厳しい言葉にこそヒントがある」

 ところで、この執念の研究をリードした平塚さんは、“デオコおじさん”という言葉が生まれるほど大ヒットした女性用体臭ケアブランド『デオコ(DEOCO)』の生みの親でもある。デオコ誕生のきっかけも、男性向けボディソープ『デ・オウ』を使っている女性からの「女性が使ってもいいんですか?」という声だった。「女性も加齢臭対策を求めているのかもしれない」と気づいた平塚さんは、研究を開始。10代から50代までのべ100人以上の女性の体臭を嗅ぎ分け、「女性は年齢とともに甘い香り(ラクトン)が減っていく」という事実を明らかにしたのだ。

 「当社では私を含め、各事業部がSNSなどのお客様の声を熱心にキャッチアップしています。商品は発売して終わりではなく、育てていく必要がある。お客様の率直な質問や疑問をヒントに、『それを叶えたい』という気持ちで商品開発をしています」

 実はロート製薬は、70年以上前から目薬にアンケートはがきを封入。当時“当たり前”ではなかったそうした施策により、ユーザーの声を集めてきた伝統がある。「蓋が開けにくい」といった辛口な意見も真摯に受け止め、改良を重ねてきた姿勢は今も受け継がれている。

「厳しい言葉にはショックも受けますが(笑)、そこにこそヒントがあると思っていて。満たされていない部分をどう良くしていくか? 今はSNSなどでダイレクトな声を聞く機会が増えたため、実際の声をより商品づくりに生かせるようになっています」

 こうして誕生した新商品が、アウトバス製品『ギュット コルセットヘアミルク』だ。前述のインバス用『ギュット コルセットヘアマスク』(2024年発売)は、髪の芯から整えてまとまる髪へ導くアプローチ。新作ヘアミルクは、髪を乾かす前や出かける前に髪になじませることで、日中の”うねり戻り”にアプローチするアイテムとして大きな期待を寄せている。

 朝整えた髪が、時間の経過とともにうねったり広がったりする“うねり戻り”に悩む人は多く、特に湿度が高くなる夏場は深刻だ。原因の一つは、紫外線や湿度の変化、冷房による乾燥などのダメージだ。これらによって髪の水分コントロールが効かなくなり、外からの水分を過剰に吸い込んで膨らんでしまうという。外からの水分には、自身の頭皮からの汗だけでなく、他人の呼気に含まれる水蒸気まで含まれる。

 ヘアミルクでは、こうした悩みに応えるためにロート製薬の知見を結集。独自の「アクアコルセット技術」を搭載し、「ヒアルロン酸カリウム」と「乳酸」がパサつく髪に潤いを与えて補修。さらに「PVP(補修成分)」が髪の表面をコーティングすることで、日中にうねりや広がりが生じやすくなった髪を内側と外側の両面からサポートする。香水の邪魔をしない超微香や、根本付近にも使いやすいようにスキンケアにも使われる成分にこだわるなど、使い心地への細やかな配慮も嬉しい。

 平塚さんは、製剤のプロとして「新成分のスペックを信じて、さらに商品としてお客様の期待値を超えるものにする」というプライドを持って開発に臨んできた。「この素晴らしい素材に出会えたのも、自分の開発の歴史に刻みたい商品になったのも、すべてはハッとさせてくれたお客様のおかげ」と感謝を口にする。

 世間の「なぜ?」を泥臭く解明し、生活者の“かゆいところに手が届く”ヒット作に変える。ユーザーの声を真摯に受け止め、そこから新しいものを生み出す企業の姿勢が、また一つ、大人の髪悩みに寄り添う新商品を誕生させた。

(文:河上いつ子)
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