イスラエル軍、ヒズボラ指導者を殺害 全面衝突に発展の可能性

2024/09/28 17:17 

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 イスラエル軍は28日、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師を殺害したと発表した。27日にベイルート郊外にあるヒズボラの「中央本部」を空爆しており、ナスララ師を標的にしたと報じられていた。

 ヒズボラも28日、死亡を認める声明を出し、イスラエルに対する「聖戦」を継続する意向を示した。双方が今後、全面衝突する可能性が高まっており、情勢は緊迫している。

 イスラエル軍の発表によると、27日の空爆は、ヒズボラ幹部が住宅の地下に設けられた本部で「テロ活動」について指揮しているところを標的にした。軍はナスララ師について「数千件のテロ活動を計画・実行し、多くのイスラエル市民を殺害した責任があった」と指摘した。

 ナスララ師は1992年、前任のムサウィ師がイスラエル軍に暗殺されたのを受け、ヒズボラの最高指導者に就いた。30年以上にわたってイスラエルとの闘争を指揮し、支持者の間でカリスマ的な人気を誇っていたとされる。

 ナスララ師の殺害は、ヒズボラを支援してきたイランにとっても大きな打撃だ。イランの最高指導者ハメネイ師は28日、「あらゆる(イスラエルへの)抵抗勢力はヒズボラを支援する」と述べた。

 ロイター通信などによると、今回の空爆は昨年10月にヒズボラとイスラエルの衝突が始まって以来、ベイルートでは最大規模。現場では複数回の爆発があり、少なくとも4棟の建物が倒壊した。レバノン保健省などによると、空爆では少なくとも6人が死亡、91人が負傷した。

 がれきの下敷きになった人もいるとみられ、死傷者は増える可能性がある。ベイルートに住む地元記者は毎日新聞の取材に「何度も爆発があった。いままでに聞いたことがない爆発音がした」と語った。

 ヒズボラはパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとともにイランの支援を受けており、昨年10月にガザ地区の戦闘が始まってからは、イスラエル軍と国境を挟んで断続的に交戦を続けてきた。レバノンでは今月17、18の両日、ヒズボラの戦闘員らが所有する通信機器がイスラエルによるとみられる工作で一斉に爆発し、多くの民間人を含む3000人以上が死傷。23日以降はイスラエル軍の激しい空爆が続き、700人以上が死亡した。

 紛争拡大の恐れが強まる中、米国などは25日、双方に21日間の停戦を提案したが、目立った進展はなかった。27日の空爆を受け、レバノンのミカティ暫定首相は「イスラエルは国際社会の停戦の呼びかけを気にしていない」と批判していた。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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