イスラエル軍がレバノン南部に地上侵攻 ヒズボラ掃討狙う

2024/10/01 08:23 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘を巡り、イスラエル軍は1日未明、地上部隊をレバノン南部に侵攻させたと発表した。軍は声明で「限定的かつ局地的で標的を絞った攻撃」だとしている。

 パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘がレバノンにも飛び火し、紛争が拡大した形だ。多数の民間人が巻き込まれるとみられ、イランや近隣諸国の反発は必至だ。中東情勢はいっそう混迷を深めている。

 ロイター通信によると、レバノン南部の国境付近の地元住民は、砲撃のごう音や上空を飛ぶヘリコプターと無人攻撃機の音を伝えているという。イスラエル軍の声明によると、今回の攻撃の標的は国境沿いの村にあるといい、イスラエルに対して差し迫った脅威をもたらしていると主張した。地上部隊を支援するため、空爆や砲撃も実施している。

 イスラエル軍は「(自国)北部の住民を帰還させるために、あらゆることを行う」と強調。ガザ地区や他の地域での戦闘と並行して行うとした。軍の発表に先立ち、イスラエル政府は治安閣議で「次の段階」の作戦計画を承認していた。

 軍は地上戦の準備を進めていた模様だ。米CNNが入手した9月29日撮影の衛星画像によると、レバノンとの国境から8キロの場所に軍の車両約100台が集結していた。

 イスラエル軍のレバノン侵攻は、2006年にヒズボラと交戦した第2次レバノン紛争以来。地上戦によりヒズボラの戦闘員を国境沿いから掃討する狙いがある。

 ただ、ヒズボラは予備役を含めて4万5000人の兵力を抱え、ガザ地区のイスラム組織ハマスを上回る軍事力を持つとされる。南部の丘陵地帯でゲリラ戦を展開するとみられ、戦闘が泥沼化する恐れがある。

 ヒズボラは昨年10月、ハマスに連帯する形で、イスラエルに攻撃を開始。国境沿いで応酬が続き、イスラエル北部では住民6万人以上が避難を余儀なくされた。

 こうした中、イスラエルは今年9月、北部住民の帰還を「戦争の目的」に加え、ヒズボラへの攻撃を本格化させた。9月中旬にはヒズボラの戦闘員らの通信機器がイスラエルによるとみられる工作で一斉に爆発。その後、イスラエル軍はレバノン各地に激しい空爆を実施した。

 27日には首都ベイルート郊外でヒズボラの中央本部を爆撃し、最高指導者ナスララ師を殺害。戦闘開始以来、レバノン側では1600人以上、イスラエル側では50人以上が死亡している。

 ヒズボラは1982年、イスラエルが当時レバノンに拠点を置いていたパレスチナ解放機構(PLO)を掃討するため、レバノンに侵攻したのを機に創設された。イスラエル軍はこのとき、地上部隊をベイルートまで北進させ、PLO幹部を追放。その後もレバノン南部で駐留を続けたが、ヒズボラによる攻撃が相次ぎ、00年に撤退した。

 また、06年にはヒズボラがイスラエル兵2人を拉致したのをきっかけに第2次レバノン紛争が起き、イスラエル軍が地上戦を展開。約1カ月にわたって戦闘が続き、イスラエル側で約160人、レバノン側で1100人以上が死亡した。【エルサレム松岡大地、カイロ金子淳】

毎日新聞

国際

国際一覧>