45年ぶり韓国戒厳令 与党代表「誤っている」 弾劾世論高まる

2024/12/04 21:42 

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 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日午後10時半ごろ、緊急の談話を発表した。国会での野党の行為について「内乱を企てる明白な反国家行為だ」と指弾し、「非常戒厳を宣布する」と表明した。しかし韓国国会は4日未明に開いた本会議で、戒厳令の解除を要求する決議案を可決。戒厳令は約2時間半で事実上、効力を失った。

 戒厳令を受けて発足した「戒厳司令部」は3日、「国会と地方議会、全ての政党活動と集会、デモを禁じる」との布告を出した。司令部の命令で、兵士らが国会議事堂に突入した。だが尹氏は4日午前4時半ごろ、「憲政秩序を崩壊させる反国家勢力に立ち向かう救国の意志で非常戒厳を宣布したが、国会から戒厳令解除の要求があったため軍を撤収させた」との談話を出し、宣布から約6時間後、閣議で正式に戒厳令を解除した。

 国会周辺には多くの市民が集まり、戒厳令の撤回を求めて叫んだほか、兵士らの国会突入を阻止しようと小競り合いになる場面もあった。

 韓国メディアによると、戒厳令は1979年10月、当時の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件を受けて宣言されて以来、45年ぶり。

 最大野党「共に民主党」は4日朝、戒厳令が「国民を愚弄(ぐろう)し、民主主義を踏みにじった」と指弾し、尹氏の退陣を要求。尹氏が応じなかったため、野党6党は4日午後、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。6日か7日に採決される見通し。

 共に民主党は、戒厳令が正当な手続きなどを踏んでおらず憲法違反のため、弾劾の要件を満たすと主張している。国会(定数300)で弾劾訴追案を可決するには在籍議員の3分の2に当たる200人以上の賛成が必要となる。

 与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表も、戒厳令を「誤っている」と激しく非難。尹氏の弾劾を求める世論の声も高まっている。4日夜、ソウル市中心部では尹氏の退陣を求めるデモが開かれた。尹政権では大統領府の秘書室長、安保室長、首席秘書官ら高官が全員、辞意を表明。また全閣僚が韓悳洙(ハン・ドクス)首相に対して辞意を伝えたとも報じられている。尹氏は政権運営も困難になったと見られ、政治的に窮地に追い込まれた。

 国会では共に民主党が過半数を占めている。尹氏は戒厳令を宣布した際、その理由として「韓国国会は、立法独裁を通じて国家の司法・行政システムをまひさせ、自由民主主義体制の転覆を企てている」と一方的に批判していた。

 国会の委員会では11月下旬、来年度の予算案のうち一部を野党が削減して可決。また、野党は検事らの弾劾を試みているほか、尹氏の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る数々の問題について国会が任命する特別検察官による捜査を繰り返し要求。尹氏はこうした野党の攻勢にいらだちを募らせ、戒厳令という極端な手法に打って出たとみられる。

 韓国メディアによると、戒厳令の解除を要求する4日の決議案は、出席した与野党190人全員の賛成で可決された。韓国の憲法は、国会の在籍議員の過半数が要求すれば大統領は戒厳令を解除しなければならないと定めている。

 韓国では2016年、親友による国政介入は違憲だとして朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)が弾劾され、その後、失職した。【ソウル福岡静哉、日下部元美】

毎日新聞

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