「国宝」喝采 「ヒットの法則破った」と関心集める 釜山国際映画祭

2025/09/21 16:37 

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 韓国の釜山国際映画祭で「国宝」(李相日(イ・サンイル)監督)が20日夜から21日にかけて上映され、大きな拍手を受けた。韓国で歌舞伎はなじみがないものの、この映画が日本で1000万人を超える観客動員数を記録したことは話題になっている。記者会見では「ヒットした理由は何か」「映画界に新たな可能性を感じるか」など、映画界の変化や展望を尋ねる質問が相次いだ。

 21日午前の記者会見には、李監督と主演の吉沢亮さんが出席。李監督はヒットは「想像していなかった」と韓国語で会場を笑わせる場面があったが、ほとんどは日本語で答えた。

 会見の最初の質問に立った映画専門記者が論評で「今映画祭で一番感動した作品。人間と芸の本質を描いた」と絶賛。そのうえで、「3作目となる吉田修一さん原作の中で、何に重点を置いたか」と、かなり掘り下げて聞いた。

 李監督は吉田さん脚本の「悪人」(公開2010年)、「怒り」(同16年)を紹介しながら、「共通しているのは人間が背負う業。今回は特に、歌舞伎で重視される血筋をテーマにした」と指摘。「血筋を有するものとアウトサイダーはそれぞれ背負っているものがあり、良い悪いではなく、お互いがないものを必要としながら芸を通じて生きる話を描いた」と映画の見どころを語った。

 「テレビ業界製作で、時間が短い作品しかヒットしないとされる日本の映画界で、ヒットの法則を本作が破れた理由は」。映画に詳しい記者が集う会見だけに、日本の映画市場の変化にも関心が寄せられた。

 「在日であることは作品にどう影響しているか」。最後には、監督自身のアイデンティティーを問う質問も出た。李監督は「アウトサイダーや社会の周辺に目線が行くのは出自が関係しているとは思うが、直接的にどう関係しているかは想像にまかせます」と答えた。

 釜山国際映画祭への参加は初めてという吉沢さんは、前夜の韓国初上映の反応について「(観客から)本質を突く質問をたくさんいただいて、深いところで作品をみていただいているんだなと肌で感じた」と手応えを語った。演技で難しかった点を聞かれ、「きれいに踊るより、感情を表現するよう監督に言われた。そこに、歌舞伎の役者ではなく我々が演じる意味がある」と、歌舞伎そのものを見るのとは違う映画の魅力を強調した。

 2人は21日午後、メインステージの「映画の殿堂」野外劇場で、ファンとのトークイベントに参加する。【堀山明子】

毎日新聞

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