EU、ロシア資産の凍結延期決定 ウクライナへの無利子融資に活用も

2025/12/13 18:56 

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 欧州連合(EU)は12日、欧州の証券集中保管機関(CSD)などが保管するロシアの凍結資産を、ロシアがウクライナへの侵攻を停止し、ウクライナに賠償金を支払うまで凍結する措置を決定した。

 これまで凍結延長には、半年に一度、27加盟国による全会一致の承認が必要だった。だがハンガリーやスロバキアなどロシア寄りの姿勢を示す加盟国が反対し、凍結が解除されるリスクがあった。このため経済危機時などに、全会一致ではなく一定の条件の下での多数決を認めるEU条約の緊急条項を適用した。

 ウクライナの国家運営資金は2026年前半にも枯渇する可能性がある。

 EUの行政執行機関である欧州委員会は、ベルギーを拠点とするCSD「ユーロクリア」などが保管するロシア中銀の凍結資産を裏付けに、26~27年の2年間で900億ユーロ(約16兆3000億円)のウクライナへの無利子融資を検討。ウクライナがロシアから賠償金の支払いを受けた場合にのみ、EUに返還する「賠償ローン」と呼ばれる仕組みを考案している。

 だが、外国の凍結資産の活用は、国際法に抵触する可能性がある。ベルギー政府は、ロシアが訴訟を起こし、ユーロクリアと自国にのみ賠償責任が発生する事態を懸念して反対している。欧州委は加盟国が28年まで最大1050億ユーロの金融保証を提供する案などを提示しているが、ベルギー政府は賠償額がさらに膨れ上がる懸念を理由に依然、難色を示している。

 今回の資産凍結延長は、ベルギーの懸念を和らげ、賠償ローンへの賛同を促す意図もある。欧州委は18日からのEU首脳会議での決着を目指しているが、イタリアがベルギーに同調する構えを見せるなど、議論は難航も予想される。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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