衆院の「裏金議員」、半数超が「解明進めるべきだ」 説明責任重く

2024/12/04 17:00 

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 臨時国会が11月28日に召集された。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件が響き、10月の衆院選で与党が過半数割れに追い込まれた後、初の本格論戦になるだけに「政治とカネ」が大きなテーマの一つとなりそうだ。

 当事者である政治資金収支報告書への不記載があった「裏金議員」は、どのように考えているのか。

 毎日新聞は衆院選の全立候補者に実施したアンケートで、裏金事件の真相解明を進めるべきか尋ねた。

 裏金問題に関与した自民党の前議員46人(離党、非公認による無所属での出馬含む)のうち、当選したのは18人。この18人のうち10人が裏金事件の「真相解明を進めるべきだ」と回答し、「真相解明を進める必要はない」はわずか3人だった。5人が無回答だった。

 「真相解明を進めるべきだ」と回答したのは、福田達夫(群馬4区)▽松野博一(千葉3区)▽平沢勝栄(東京17区)▽萩生田光一(東京24区)▽田畑裕明(富山1区)▽佐々木紀(石川2区)▽宮下一郎(長野5区)▽関芳弘(兵庫3区)▽西村康稔(兵庫9区)▽加藤竜祥(長崎2区)――の各議員。半数以上の「裏金議員」が真相解明を望んでいることになる。

 しかし、衆院選前の国会では、この10人のうち松野、西村両氏以外は政治倫理審査会(政倫審)に出席しておらず、松野、西村両氏も政倫審では「会計に関わっていなかった」などとして事件への関与を否定。事件の真相は解明されなかった。

 有権者は候補者アンケートの内容を参考にして投票している可能性があるだけに、「真相解明を進めるべきだ」と回答した議員は、今国会で自ら積極的に真相解明に協力していく責任がある。

 一方、「真相解明を進める必要はない」と回答したのは、柴山昌彦(埼玉8区)▽根本幸典(愛知15区)▽宮内秀樹(福岡4区)――の各議員で、無回答だったのは、簗和生(栃木3区)▽小森卓郎(石川1区)▽稲田朋美(福井1区)▽鈴木英敬(三重4区)▽世耕弘成(和歌山2区)――の各議員。鈴木氏は自由記述欄に「調査をやり直す必要はない」と記入した。

 毎日新聞が11月に実施した全国世論調査では、石破茂首相が実態解明に向けた取り組みを続けるべきだと思うか尋ねたところ「続けるべきだ」が71%を占めており、国民が依然、強い疑念を持っていることがうかがわれる。

 裏金事件に関与した議員は「真相解明を進める必要はない」との立場を取ったとしても、説明責任から逃れることはできないだろう。

 毎日新聞は候補者アンケートで、企業・団体献金の禁止についても聞いている。「廃止すべきだ」と回答したのは18人中、世耕氏のみ。世耕氏と無回答の松野氏を除き、16人が「廃止する必要はない」と回答した。

 企業・団体献金の在り方も今国会で議論されるとみられ、立憲民主党など多くの野党は廃止を求めている。政治とカネの透明化に向け、裏金事件に関与した議員は一層の説明が求められそうだ。

 衆院だけでなく、裏金事件に関わった参院議員27人も政倫審に出席する意思があるという。

 ただ、「リクルート事件」を受けて1994年に政治改革関連4法を成立させた細川内閣で首相特別補佐を務めた田中秀征・元経済企画庁長官は「どうなれば『問題は解明された』と思うか、議員本人と有権者には乖離(かいり)がある」と指摘する。

 リクルート事件は、情報サービス大手リクルートが、値上がり確実な未公開株を多数の政治家らに譲渡していた事件。今回の裏金事件を「令和のリクルート事件」と呼ぶ向きもある。

 田中氏は「有権者も納得するよう、第三者が①裏金の事実を知っていたか②違法性を認識していたか③自分が関与したか――などを厳しく追及していくべきだ」と話し、中立な第三者機関による調査の必要性を強調している。【野原大輔、大隈慎吾】

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