関西空港でスーツケースの放置・廃棄が増加 検査に手間、費用負担も
関西国際空港のターミナルで旅客数の回復に合わせ、不要になったスーツケースの放置や廃棄の件数が再び増加に転じている。回収の際に危険物でないことを確認する必要があり、検査に最長約20分と手間がかかり、廃棄費用の負担も生じる。関空の担当者は「絶対に捨てないでほしい」と強調し、旅客を対象にスーツケースを引き取るリユースサービスの利用を呼びかけている。
「ハイキ」とカタカナで書いた紙を貼り、廃棄を依頼するスーツケースがターミナル2階ロビーのごみ箱のそばに置かれていた。ファスナーが閉じられ、中身は見えない。
大勢の旅客が集まる空港という場所柄、放置や廃棄されているスーツケースは安全を確認しなければいけない。警備担当者が爆発物の有無を検査し、施錠されている場合には追加でエックス線検査もする。中身を確認して問題がなければ拾得物として扱う。この作業は最長で20分かかる。忘れ物の可能性もあり、3カ月間保管してから廃棄業者に引き渡す。旅客から忘れ物をしたと連絡してくることはほぼないという。
スーツケースはごみ箱の近くに廃棄されるほか、荷物の詰め替えエリアや人通りの少ない階段など空港内のいろいろな場所に放置されている。壊れたり、新品を購入したりして、放置していくのが大半とみられる。
関空でのスーツケースの放置や廃棄は、新型コロナウイルスの感染拡大前から問題になっていた。空港を運営する関西エアポートによると、2018年度は549件、19年度は716件だった。コロナ禍で旅客数が落ち込み、22年は148件まで減った。旅客数の回復に伴い、23年は477件で、24年1~6月は273件と再び増加傾向にある。
関空は18年、再利用可能なスーツケースを無償で引き取るリユースサービスを始めた。第1ターミナル2階の案内カウンターで受け付け、航空券とパスポートを提示し、所有権放棄の同意書に署名してもらう。取扱件数は、20年度22件▽21年度27件▽22年度171件▽23年度507件――とコロナ禍後に増えている。
再利用可能なスーツケースはリサイクル業者に引き渡し、中古品として販売される。再販売の店舗は非公開。空港内のイベントでの活用も検討している。課題もある。状態を細かくチェックすると、汚れや取っ手の不具合、小さな穴などが見つかるため、再販売できるのは1割に過ぎず、結果的に9割は廃棄される。
関西エアは「空港内の美観を維持し、旅客が快適に利用してもらう取り組みとしてリユースサービスを実施している。回収の手間を省き、再利用することで環境への負荷を減らし、廃棄費用の削減にもつながる」と説明している。【中村宰和】
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