「命奪われた悔しさ増す」 17年前の兵庫女児殺害、地元住民の悲しみ
小学2年の鵜瀬柚希(うのせゆずき)さん(当時7歳)が殺害された事件は、容疑者の逮捕までに17年の時を要した。その間、事件現場付近の住民らは未解決のまま不安な時を過ごし、未来ある優しい子の命が奪われた悲劇に心を痛めてきた。
27日夕方、兵庫県加古川市別府町のたけひろ公園は紅葉に囲まれ、子供たちが駆けっこやブランコをして遊んでいた。17年前の2007年10月16日、柚希さんも同じ頃、この公園で友達と元気に走り回っていた。柚希さんは友達と別れて帰宅した午後6時すぎ、自宅玄関前付近で勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)=殺人容疑で逮捕=に襲われた。
勝田容疑者は27日午前10時25分ごろ、捜査本部がある兵庫県警加古川署へ移送のため、勾留先のたつの署を出た。捜査員に囲まれた勝田容疑者は白色のマスクを着けてフードを深くかぶり、終始顔を伏せて移送車両に乗り込んだ。
事件解決を願い、県警では毎年のようにJR加古川駅前などで情報提供を呼び掛けるビラを配布してきた。柚希さんの自宅近くに住む70代女性は「(ビラが)配られる度、ああ命日やな、16日やなとさみしく思っていた」と話す。
事件当時、女性には幼稚園児の孫が2人いた。近所のパトロール体制は厳重で、街灯は徐々に増えたものの、「容疑者が近くにいるのではないか」と不安におびえる日々が続いたという。「もう毎年のように心配しなくてすむ」と安堵(あんど)する一方、「(逮捕が)なんで今の時期なんやというくらい遅かった。(柚希さんは)もう戻ってこない」と憤った。
近所の60代男性も事件当日、現場付近に規制線が張られ、県警などが配備したライトが照らされて騒然となる様子を今でも鮮明に覚えている。男性の長男も当日、たけひろ公園で遊んでいた。「残された家族は犯人がなぜ殺したのか分からないまま過ごしただろうし、子供を持つ親として本当に気の毒に思う」とおもんぱかった。
柚希さんが通っていた小学校に当時在籍していた教職員の1人によると、音楽会の発表を控えた練習の際、柚希さんはリズムの取り方が分からない児童に丁寧にアドバイスしていたという。「(逮捕の一報に)少し肩の荷が下りたが、容疑者の人となりが明らかになるにつれ、優しい子供の命が奪われたことに悔しさが増している。真実が知りたい」と嘆いた。
子供が柚希さんの同級生で、自身も面識があったという近くの50代女性も「(柚希さんは)人懐っこくて無邪気。知らない人にも積極的に話しかける、かわいらしい印象だったのに……」と声を落とした。
加古川市の岡田康裕市長は27日、「犯人は逮捕されたが失われた幼い命が戻ってくることはなく、大変悲しく残念でならない。胸が締め付けられるような思い。市民の安全・安心な生活を守っていけるように取り組んでいく」とコメントを発表した。同市教育委員会も「事件から17年が経過したが、やり切れない思いがある。二度とこのような悲しい事件が起こらないように強く願う」とコメントした。【幸長由子、面川美栄、斉藤朋恵】
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