元フジ専務の関テレ社長が辞任 「女性に寄り添えず苦しめた」と謝罪

2025/04/04 15:24 

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 元タレントの中居正広氏がフジテレビのアナウンサーだった女性に性暴力を加えた問題で、当時フジの専務だった関西テレビ(大阪市)の大多亮社長が4日、辞任した。大多氏は第三者委員会の報告書で、フジの港浩一社長(当時)らとともに人権意識の欠如などを厳しく指摘されていた。

 大多氏は同日午後、記者団の取材に応じ、「(第三者委の)指摘を真摯(しんし)に受け止め、これ以上社長を続けることは不適切と考えた」と述べ、同日付で辞任したことを発表した。続けて、「Aさん(女性)の心情に寄り添うことができず、彼女を苦しめてしまったことは本当におわびしたい」と謝罪。「中居氏や番組を守ろうという意識はまったくなかった。彼女のためを思って対応してきたつもり」とした上で、第三者委に女性の意思を無視し、責任を転嫁する行為だったと指摘されたことを「大変重く受け止めている。彼女にもっと寄り添った行動ができたのではないかと深く反省している」と述べた。

 大多氏は2022年から専務を務めていた。3月31日に公表された第三者委員会の調査報告書によると、大多氏は23年8月、編成制作局長らから内容の報告を受け、港氏に報告。女性が中居氏から性暴力を受けた事実を聞きながら、「プライベートにおける男女トラブル」と判断した。

 その後も、港氏や大多氏らは事実が広がれば女性が自死する危険性があるとの考えから、他の役員との情報共有や人権・コンプライアンスの専門家への相談を行わず、中居氏の番組出演継続などの対応方針を決定した。

 報告書では一連の対応について「浅い思慮」「思考停止に陥り、現状を変更しないことを決定して責任を回避しようとしていた」と指摘。自社の「有力取引先」である中居氏による社員への人権侵害という事態が発生しているにもかかわらず、「性暴力への理解を欠き、被害者救済の視点が乏しかった」と断じた。「経営判断の体をなしていない」とも指摘した。

 また、類似事案の調査の中で、大多氏が懇意の番組出演者との会合にたびたび女性アナウンサーを同席させていた事実も判明。会合での会話には性的内容が含まれていたため不快だったと回答した参加者もいた。報告書は大多氏が「有力番組出演者の歓心を得る目的をもって、性別・年齢・容姿などに着目して女性アナウンサーを同行させていた」と認定した。

 大多氏は1981年、フジに入社。プロデューサーとして「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」などを手がけた。24年6月、フジ系列の準キー局、関西テレビの社長に就任した。

 1月の定例記者会見では「非常に重い案件で、ある種の衝撃を受けた。問題について知っている人が増えるのは避けた方がいいとも考えたが、その日のうちに社長に報告した」と釈明。中居氏のレギュラー番組を継続したことについても「番組を打ち切ることで彼女に影響があるのではと考えた」などと述べ、中居氏への忖度(そんたく)があったのではと問われると、「一切なかった」と答えていた。【谷口豪】

毎日新聞

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