難民申請中の外国人収容施設 昨年までエアコン24時間運転せず

2025/10/25 05:30 

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 日本からの強制退去を命じられた外国人を収容する入管施設のうち、難民認定申請中の長期収容者らがいる施設(2カ所)で2024年まで、夏場にエアコンの24時間運転をしていなかったことが毎日新聞の取材で判明した。エアコンが止まる夜間・未明に熱中症となる収容者がいたことも分かった。2施設とも25年から運転基準を改めたが、専門家は「人権を無視した対応で許されない」と入管の対応を厳しく批判している。

 ◇夜間はエアコン停止

 在留資格がなく、強制退去を命じられた外国人は本国に送還されるまでの間、入管施設に収容される。施設は全国に17カ所あり、このうち東日本入国管理センター(茨城県牛久市、牛久入管)と大村入国管理センター(長崎県大村市、大村入管)には、難民認定を申請しているなどの理由で収容期間が6カ月以上になった長期収容者らが集められている。17日現在、両施設に59人が収容されている。

 エアコンをどう運転するかは、各施設長の判断に委ねられる。毎日新聞が全17施設に23~25年夏の運転状況を尋ねたところ、牛久、大村両入管は24年まで24時間運転をしていなかった。牛久の運転時間は7~9月が午前8時~午後11時で、夜間・未明は止めていた。大村の運転時間は原則、6月15日~9月15日に午前6時~午後10時としていた。

 一方、短期間の収容者がいる他の15施設のうち13施設は23年以前から24時間運転している。残る2施設は、送還日の日中に一時待機する関西空港支局と、近年の収容実績がない神戸支局で、24時間運転の必要はなかった。

 ◇「対応は適切」と2施設

 最近の夏は猛暑が続き、日本の6~8月の平均気温は25年まで3年連続で過去最高となっている。熱中症による救急搬送者数(5~9月)も増え、25年(速報値)は全国で10万人を超えて統計開始以来最も多くなった。

 エアコンを24時間運転していない入管施設では、収容者が熱中症になっていたことも判明した。牛久、大村両入管は熱中症者の事例を「回答できない」としているが、牛久に収容されているペルー出身の30代男性によると、24年7月、エアコンが止まった夜間に熱中症となり、点滴治療を受けた。25年5月にも熱中症になり、茨城県警が業務上過失傷害容疑で捜査している。

 こうしたなか、牛久入管は25年からエアコンを24時間運転に変更。大村入管も25年から7~9月は午前6時~翌午前3時の運転とした。両施設とも「記録的な猛暑」を運転基準変更の理由としており、24年までの運転が適切だったかを聞くと「重大な問題は把握していない」(牛久)、「温度や湿度が高い日は時間外も運転していた」(大村)と対応は適切だと回答した。

 ◇専門家「一種の拷問」

 環境省は熱中症予防のため、昼夜を問わずエアコンを使用し、就寝時にタイマーをかける場合は「少なくとも3~4時間」後にオフとなる設定にするよう呼びかけている。

 入管問題に詳しい指宿(いぶすき)昭一弁護士は「猛暑は今年になって始まったわけではない。入管法は収容者の人権を尊重した処遇をするよう求めているのに、エアコンを止めていたのはこれに反する。退去に従わない外国人に『本国に帰ります』と言わせるための一種の拷問だ」と指摘。法務省入国管理局参事官が1965年に出版した著書で「(外国人は)煮て食おうと焼いて食おうと自由」と記載したことに触れ、「人権を無視した思想が今も入管に根付いていると言わざるを得ない」と話した。【遠藤浩二】

毎日新聞

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