新潟県、柏崎刈羽で原発事故訓練 避難経路や物資供給に不安の声

2025/11/10 16:02 

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 新潟県は9日、東京電力柏崎刈羽原発の重大事故を想定した訓練を実施した。訓練は柏崎刈羽地域で発生した震度6強の地震で同原発6号機が自動停止し、炉心冷却機能を喪失して放射性物質が放出される厳しい状況を想定。参加者からは不安の声も聞かれた。

 ◇周辺住民ら300人参加

 訓練には柏崎市や刈羽村など5市町村の住民ら300人が参加。各地から移動したり、搬送したりする訓練などが実施された。

 原発から5キロ圏(PAZ)にある特別養護老人ホーム「にしかりの里」(柏崎市西山町長嶺)では、東電の福祉車両による要支援者の搬送訓練があり、女性社員2人が車椅子の社員を車に乗せ、村上市の特別養護老人ホーム「いわくすの里」に搬送した。

 にしかりの里の山田宥人施設長は、液状化による道路寸断も想定されることから「実際に村上市まで車で搬送できるのか、状況に応じて途中の病院に緊急的に入院させることも考えられる。施設にはPAZに住む職員もいるので、有事の際に必要な職員数を確保できるのか不安要素がある」と話した。

 原発5~30キロ圏(UPZ)にある北鯖石コミュニティーセンター(柏崎市中田)では、住民約100人が支援物資の受け取り訓練に参加。県トラック協会柏崎支部が自主的に輸送した水と非常食を、消防団員らから受け取った。

 ◇地元自治体から指摘

 原子力規制委員会は10月に「原子力災害対策指針」を改正し、屋内退避の目安は3日間とするが、住民の丸山博さん(76)は「家に多少の保存食はあるが、電気やガス、水道が止まると3日間もつか分からないので、支援物資は気持ちの上で安心できる。屋内退避が1週間になったりしたら供給体制が分からないと不安になる」と話した。

 柏崎市の桜井雅浩市長は、要支援者の搬送時に力仕事が要求される場合も想定し補助の1人を男性にすることなど、課題を指摘したうえで、「(原発事故時の避難に関する)市民の意識は高まっており、屋内退避の重要性や屋内退避で一定の安全安心が確保できることを改めて伝えていきたい」と話した。

 また、UPZの住民が屋内退避訓練に参加した上越市の小菅淳一市長は就任後の初公務として柏崎市の避難者受け入れ状況を視察。小菅氏は「市内外問わずUPZ住民の生命・財産を守るため、柏崎市と協力しながら避難所などをきちんと整えていく必要性を感じた」と話した。【内藤陽】

毎日新聞

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