京都大で入学式 学長や卒業生が2900人の新入生に贈った言葉は

2026/04/07 18:02 

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 京都大の入学式が7日、京都市左京区の市勧業館「みやこめっせ」で開かれた。新入生は10学部で計2942人(男性2249人、女性693人)。湊長博学長は文章力や海外体験の大切さを説き、「できるだけ多くの出会いを経験し、新しい自分を発見して、人生の目標をつかんでいかれることを祈念する」と言葉を贈った。

 湊学長は生成AI(人工知能)やSNSの普及で人間の語彙(ごい)や表現が貧しくなる懸念に言及し、自分の文章を書くことの重要さを強調。専制的な支配者が言葉の簡素化で国民の思考を縮小させ、思想や表現の自由を消滅させようとする内容が描かれたジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」にも触れ、「(文章は)自分の感情や思考を表現するプロセスであり、そのためによく考える必要がある」と述べた。

 また、自身が卒業後に渡米し、各国からの研究者らと切磋琢磨(せっさたくま)した経験を語り、在学中の海外訪問を推奨した。

 続いて先輩からの祝辞として、2005年に農学部卒、10年に大学院農学研究科博士後期課程修了で現在は国立研究開発法人国際農林水産業研究センターの生産環境・畜産領域プロジェクトリーダーを務める辻本泰弘さんが登壇した。

 「未知の世界に挑戦し、答えのない問いや異なる価値観とぶつかることが大学で得られる最も大きな価値」と話し、面白そうだと感じた講義は学部・学科が違っても受けてみることを推奨。「京大にはノーベル賞を取るすごい先生や、何だか分からないけど楽しそうなことをやっているユニークな先生がたくさんいて視野を広げてくれる。ありがたいことに、たくさん授業を取っても授業料は変わらない」と話した。

 大学院時代に電気もガスも携帯電話の電波も届かないマダガスカルの農村地域で3年半を過ごした経験を紹介。出発時には恩師から使い古したバネばかりとモノサシを渡され、研究テーマとして「生きて帰ってこい」と言われたといい、「まさに京大が誇る自由の学風と自学自習の精神」と振り返った。

 最初は修道院の門をたたいて屋根裏部屋に住まわせてもらい、マダガスカル語を一から勉強。下痢やマラリアにも見舞われる中で生き抜く忍耐力がついた。「育ってきた環境の外に出ることは、自分の強み、弱みを見つめ直すことにつながる。マイノリティーとして暮らす経験は、異なる他者への寛容さを育ててくれる」と話し、「何よりも感受性の豊かな学生時代に得た未知の世界での体験は、自分を突き動かす強い原動力を与えてくれる」と結んだ。

 経済学部に入学した吉野雅弘さんは取材に「自由さで京大を志望した。世界に貢献しながら身近な人も幸せにできるよう学び、短期でも海外に行きたい」。工学部の渡辺結月さんは「いろんな人と関わって視野を広げていきたい」と話した。【太田裕之】

毎日新聞

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