将棋の脇謙二九段が引退 「脇システム」で升田幸三賞特別賞

2026/05/01 21:34 

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 相矢倉の戦法「脇システム」を考案した将棋の脇謙二九段(65)が1日、大阪府高槻市の関西将棋会館で指された第39期竜王戦6組昇級者決定戦で安用寺孝功七段(51)に敗れ、フリークラス規定による引退が決まった。

 1979年7月のプロ入り以来46年10カ月の現役生活で、生涯成績は661勝754敗。早指し新鋭戦など棋戦優勝は3回を数え、順位戦では羽生善治、渡辺明の両九段と並ぶ歴代3位タイの21連勝を記録するなど、記憶に残る棋士だった。

 2017年から日本将棋連盟の常務理事、19年からは専務理事を務める脇九段は終局後、「連盟がピンチなときに藤井(聡太名人)さんが彗星(すいせい)のごとく出てきて将棋界全体が盛り上がった。東西の新しい将棋会館は完成が2、3年ずれる予定だったが、連盟創立100周年の年に同時に完成した。それが一番の思い出」と語った。

 小学6年で本格的に将棋を始め、奨励会入会は中学3年の春。あこがれの棋士は振り飛車の名手だった森安秀光九段。「姿勢が良くて、決め手を放つときは背筋を伸ばしてピシッと指す。かっこよかった」と、記録係を買って出て、脇九段が記録を取った対局は森安九段の19勝1敗だった。

 プロ入り後も後手番ではよく振り飛車を指したが、順位戦で2期連続昇級できず、居飛車一本に変えた。第40期順位戦を3連勝で締めくくると、41期は10戦全勝、42期も開幕から8連勝し、足かけ3年で21連勝を記録。41期、42期と、連続昇級を果たした。「あの頃はよく勝ってましたね」と頰を緩めた。

 ちなみに、順位戦の連勝記録1位は森内俊之九段の26連勝、2位は藤井聡太名人の22連勝。

 脇九段といえば「脇システム」。相矢倉戦で、後手の6四角に先手は3七銀型から4六角とぶつける攻めの戦法だ。19年度には当時七段だった藤井名人らも採用し、斬新な発想の戦法などに贈られる将棋大賞の升田幸三賞特別賞を受賞した。

 「当時の矢倉は4六銀、3七桂の形がすごくはやっていた。みんなと違う将棋をやりたいなということでやり始めたら意外と奥が深くて、新しい発見がいっぱいあった。いろんな人もやりだして、そうすると僕と違う発想が出てくるんで、こんなに長くやるとは思ってなかったんですけど、升田幸三賞の特別賞はびっくりしました。うれしかったです」

 思い出の対局は92年の第5期竜王戦1組決勝で米長邦雄九段(永世棋聖)を破り、優勝した一局。「秒読みのすごい大熱戦。互いに(相手の詰みを見落として)勝ちを逃してね。まさか優勝するなんて夢にも思ってなかったんで」

 報道陣にこれからしたいことを問われると、「理事の任期がまだ1年あるので、その間は仕事を頑張りますけど、終わったら、もうゆっくりしたいなと思ってます」

 この日は東京から唯一の弟子の指導棋士四段、藤田一樹さん(37)が駆けつけ、花束を手渡した。「勝負には熱い師匠だったが、やさしく指導してもらいました」

 最後は奨励会同期の福崎文吾九段(66)、切磋琢磨(せっさたくま)した浦野真彦八段(62)、同時期に関西奨励会の幹事で苦労を共にした畠山鎮八段(56)、現在、連盟の理事でコンビを組む糸谷哲郎九段(37)も一緒に記念撮影して対局室を後にした。【新土居仁昌】

毎日新聞

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