<癒やし旅>赤い海と波打つ砂紋 潮流と風が生み出す絶景 熊本・宇土
九州4県に面する有明海は日本一の干満差がある内海だ。外海の東シナ海に押された海水は細長い湾の中で増幅し、最大で6メートルの潮差を生み出す。干潮時、遠浅の海からは広大な干潟が現れる。
熊本県宇土市の御輿来(おこしき)海岸では潮流と風、砂干潟が絶景を生み出す。あかね色に染まる海が浮かび上がらせる砂紋は「日本の夕陽(ゆうひ)百選」にも選ばれていて、一度は訪れてみたいと思っていた。
市では、日没前後1時間に潮位が50センチ以下となる日を「絶景日」、50~70センチの日を「準絶景日」とし、市観光物産協会のホームページで公開している。年に10日ほどしかない「絶景日」を狙って撮影準備を進めた。
JR熊本駅から車で45分。車1台がやっと通れる山道を抜けると、多くの車が止まっていた。市によって展望所として整備された段々畑の一角には50人以上が集まり、日没を待っていた。
晴れてはいるものの遠方は黄砂の影響でかすみ、雲も多い。「今日は厳しいかな」。日没が迫るころ、そんな声が聞こえた。
日が沈むにつれて空は少しずつ色づいてきた。だが変わらず太陽は見えない。日没の午後6時50分ごろを過ぎると、帰路につく人たちも出始めた。
諦めきれずにいると、薄い雲をまとった西の空が一瞬で真っ赤に染まった。体感で2分ほどだろうか。夕空を映した水面と三日月形の砂紋のコントラストがより一層、際立ったように見えた。
干満差は有明海特産のノリ養殖にも利用されている。海に張り巡らされた網は干潮時、空中に露出し光合成が促される。
日没後、6キロほど離れた長部田(ながべた)海床路に立ち寄った。ノリ養殖業者のために造られた約1キロのコンクリート舗装路で、干満で海に沈んだり現れたりする。
満潮時には電柱だけが海から突き出たような不思議な光景が広がる。船の航行のためにともされた電灯が暗闇に寄せる波を浮かび上がらせた。
潮の満ち引きがもたらす二つの景色に魅了された一日となった。【玉城達郎】
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