「ぜひ監督に」和田毅投手引退惜しむ声 ワクチン寄付など社会貢献も
米大リーグへの挑戦も挟んで22年間、マウンドに立ち続けてきたプロ野球・福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手(43)が5日、今季限りでの現役引退を発表した。日米通算165勝。球場だけでなく、社会貢献活動にも意欲的に取り組んできた左腕の引退をファンや関係者が惜しんだ。
「けがもあったりアメリカに行ったり、失敗とかたくさんのことをやった。自分にとって全てがプラスになったし、これまでの野球人生で無駄なことはなかったと誇りを持って言える」。ホークスの本拠地、福岡市のみずほペイペイドームで引退記者会見に臨んだ和田投手はすがすがしい表情で現役生活を振り返った。
2003年にダイエーに入団し、年間2桁勝利が計8回。10年はリーグ最多勝の17勝を挙げ、7年ぶりのリーグ優勝に貢献した。12~15年には米大リーグに挑戦。ソフトバンクに復帰した16年にも2度目のリーグ最多勝に輝き、最後の松坂世代として現役を続けてきた。
引退の一報に、みずほペイペイドーム周辺を散歩していた福岡市西区の会社員、宗(そう)満洋さん(63)は「リーダー的存在だった選手がいなくなるのは寂しい」と惜しみ、「次はぜひ監督になってほしい」と期待した。ドーム横のグッズ販売店から出てきた福岡市早良区の八田マスミさん(76)は「最初から好印象でずっとファンだった。後輩から慕われ、信頼が厚かったと思う。本当にお疲れ様でした」と語り、「せっかくだから和田投手のグッズも買ってこようかしら」と店に戻っていった。
和田投手は05年から発展途上国の子どもたちにポリオなど感染症予防のワクチンを寄付する活動を始め、「僕のルール」として、試合での1球ごとに10本▽勝利投手になれば1球20本――などと投球数や成績によって寄付数を決めた。
NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」によると、和田投手からの寄付は計73万5120人分に上った。剱持(けんもち)睦子理事長は「『僕のルール』は共感を生んで全国へ広まり、より多くの子どもたちにワクチンを贈り届けることができた」と感謝のコメント。和田投手は5日の会見後の取材に「今後も新たなルールを作って貢献できれば」と語った。
NPO法人「ベースボール・レジェンド・ファウンデーション」を通じて、ひとり親家庭の子どもたちへの野球用具の寄贈などにも取り組んできた。岡田真理代表は「和田投手の発案で実現した支援も多い。プレーを通じて子どもたちを元気づけてくれた。今後は子どもたちに直接会いに行くなどの活動も一緒にできたらうれしい」と話した。
11年の東日本大震災後には、東京電力福島第1原発事故の影響で部員が減少し、連合チームを組んでいた高校球児の送迎用として、福島県高校野球連盟にマイクロバスを寄贈した。県高野連によると、車体には12球団約80人のプロ野球選手のサインやメッセージが寄せ書きされ、和田投手は「絆」と書き入れた。連合チームとして集まって練習する際など、約8年間使用された。
県高野連顧問の宗像治さん(71)は「『絆』を大切にする選手。私たちに寄り添った温かい行動のおかげで、福島の球児たちは本当に勇気づけられた」と話した。【池田真由香、日向米華、田崎春菜】
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