けが乗り越えW杯出場 冨安選手に「力を最大限に」と地元期待

2026/06/29 19:00 

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 サッカー・ワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会で日本は決勝トーナメントに進出した。中心選手の一人が、福岡市出身のDF冨安健洋(たけひろ)選手(27)=アヤックス。海外で活躍中の今もプロ生活を始めた地元・福岡で若手選手の育成支援に力を注ぐ。相次ぐけがを乗り越えてのW杯出場に関係者は「力を最大限出し切って」と30日(日本時間)のブラジル戦での活躍に期待する。

 「自分はここにいてはダメだ、一日でも早くトップチームに上がるんだというものを見せてほしい」

 2022年に冨安選手の提案で始まったアビスパ福岡育成組織の選手向けの特別支援プログラム(通称・冨安プログラム)。冨安選手は福岡市のグラウンドでユースチーム(主に16歳以下のU16と15歳以下のU15)の選手約30人に語りかけ鼓舞した。

 冨安選手は小学1年の時、地元クラブ「三筑キッカーズ」でサッカーを始めた。中学生からJリーグ・アビスパ福岡の育成組織(アカデミー)に入り、高校2年生の時にアビスパとプロ契約を結んで、高校3年生の16年にJ1リーグ戦でデビュー。18年から海外に活躍の場を移した。

 ◇留学費負担し、名門クラブに派遣

 支援プログラムを始めたのはプレミアリーグ・アーセナルに所属していた時期で、冨安選手は帰国して選手約30人を3日間、直接指導した。25年8月にはプログラム参加者からそれぞれ2人をドイツ、ブラジルの名門クラブに派遣。冨安選手が留学費用を全て負担し、約2週間の練習に参加させた。

 留学前の4人には「この経験を無駄にしないように。いろいろなものを吸収し、日本(サッカー界)のためにプレーできるようになってくれたらうれしい」と伝えたという。

 ドイツ・マインツに留学したFW前田陽輝(ひかる)選手(17)は「基礎がしっかりし、スキル(技術)の高い選手が多く、世界のレベルを知ることができた。成長できたと思う」と振り返り、翌月にはアビスパ福岡とプロ契約を結んだ。ブラジル・パルメイラスに留学したDF藤川虎三(たけぞう)選手(17)は、W杯チームに同行するU19(19歳以下)日本代表に選ばれ、現地で練習パートナーを務めた。

 冨安選手を中学時代に指導した、アビスパ福岡のアカデミーテクニカルアドバイザー、藤崎義孝さん(51)は冨安選手の支援について「(海外での)経験をできるだけ早く伝えた方が(後輩)選手のためになると感じていたようだ」と説明。他クラブの関係者から「(育成組織に)ここまで投資し関わってくれるのはすごいと驚かれる」と明かす。

 ◇冨安選手の人柄学んで

 三筑キッカーズの辻寛二代表(75)によると、冨安選手は海外に渡ってからも、シーズンオフやリハビリ中の帰省で度々練習場に顔を出す。「ふらっとやって来て、子どもと一緒に(ボールを蹴って)遊んでいたり、気が付いたら練習試合でコーチと並んでベンチに座っていたりする」と明かす。一番に練習に来て、後片付けをして最後に帰る。「真面目で落ち着いた少年時代と変わらぬ冨安選手の人柄を子どもたちには学んでほしい」と話す。

 前回のカタール大会以降、2度の膝の手術など、けがに苦しみ、日本代表からも約2年離れ、一時はW杯出場も不安視されていた冨安選手。初戦オランダ戦は後半30分から出場し、先発した2戦目チュニジア戦では78分間プレー。相手の攻撃の芽を摘み、時に味方の攻撃の起点ともなり、安定感と存在感を存分に発揮した。

 藤崎さんが初戦後、LINE(ライン)で「さすがのプレーだったね」とねぎらうと「選手全員が役割を把握しているから、違和感なくできた。それがチームの良いところ」という趣旨の返信があったという。「自分の心の内をあまり表に出さない」という冨安選手だが、藤崎さんは今大会後に「思い切り自分のプレーを出せました」という返信が来るのを待っている。【谷由美子】

毎日新聞

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