ドローンが秘める可能性は? 新たな活用に向け、札幌でサミット開催
近年、ドローンの活用が急速に広まっている。大規模災害の現場ではさまざまな運用が行われ、北海道内でも観光や農業、医療などの分野で活用実証事業が進められてきた。今後、どのような可能性を秘めているのか。1、2日に札幌市白石区の札幌コンベンションセンターで開かれた「第3回ドローンサミット」を取材した。【金将来】
サミットは、社会的な課題へのドローンの活用を進めようと、経済産業省や道などが主催。道とNTT東日本主催の「北海道ミライづくりフォーラム2024」も同時開催され、道内外のドローン開発企業など72社・団体が出展するなどして最新技術を紹介した。
目玉の一つが災害時を想定したドローンのデモ飛行だ。
今年1月の能登半島地震では、道路の寸断で多くの地区が孤立状態になった中でドローンが活躍。上空からの被災状況の確認や倒壊した建物内の情報収集、医薬品の運送などで活用された。
サミットの会場では、無人航空機(UAS)を含む次世代移動体システム産業の振興に取り組む一般社団法人「日本UAS産業振興協議会(JUIDA)」や宅配会社「佐川急便」など、20以上の企業・団体が能登半島地震被災地で飛ばしたドローンのデモ飛行を実演し、観客の注目を集めていた。
JUIDAの総合危機管理士、嶋本学さんは「能登地震のように正月に災害が起これば対応が遅れる。より多くの企業が参入することで、素早い対応が可能となる」と指摘。一方で能登半島地震の際にはドローン運用に関する地元自治体との協定がなく、導入に時間を要したケースもあったことから、「災害時にドローンをすぐに活用するためには自治体との協定が必要」とさらなる活用に向けた環境整備の必要性を説いた。
会場にはドローンの操縦や空飛ぶ車の仮想現実(VR)体験コーナーも設けられ、2日間で計約4374人の来場者が近未来の技術を楽しんだ。
◇北海道、ドローン活用の先進地目指す
「北海道はドローンをはじめとする未来技術を活用できる可能性のある大地」。サミットの開会式であいさつした鈴木直道知事は今後への期待を寄せた。
広大で人口密度の低い道内は、ドローンを飛ばす最適条件を備えており、新たな活用策を模索する動きも活発に進む。
既にヒグマの位置情報把握や堆肥(たいひ)の散布などでドローンが導入されているほか、上士幌町では農村地域に住む高齢者らを支援しようとドローンによる宅配サービスが運用されている。
一方、道は昨秋以降、レーザースキャナーによる道路排雪量の計測や屋根などへの融雪剤の散布、ビルの外壁・ガラス洗浄などの実証実験を実施。今後、寒冷地での活用や1台で複数の用途に使えるマルチユースドローンの開発などをさらに進め、道をドローン活用の先進地にすることを目指す。
道次世代社会戦略監の大矢邦博さんは「ドローンは今後欠かせないツールになる。実証事業などの取り組みを通じ、北海道を日本をリードするドローンフィールドにしていきたい」と話した。
◇ラピダス代表取締役「半導体で世界のトップに」
イベントでは、千歳市で次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)の清水敦男代表取締役が、次世代半導体製造の重要性などについて、基調講演を行った。
清水氏は「人工知能(AI)への先端ロジック半導体の利用ニーズが非常に高まっている」として、産業ロボットやドローンの細密化、軽量化を実現するために、ラピダスが量産を目指す2ナノメートル級の次世代半導体が必要になると強調。「もう一度、半導体で日本が世界のトップグループに戻って、日本の確固たる資産を次世代に受け継いでいきたい」と力説した。【金将来】
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