高橋一生×井浦新 映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』インタビュー

2025/05/24 08:30 

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高橋一生、井浦新 (C)ORICON NewS inc.

 相手の秘密を“本”として読み取る特殊能力「ヘブンズ・ドアー」を持つ人気漫画家・岸辺露伴が、奇怪な事件に挑む姿を描いた『岸辺露伴は動かない』。荒木飛呂彦原作の世界観を実写化したドラマ版は、高橋一生の主演で2020年にスタートし、これまでに3期まで放送。圧倒的な映像美と緻密な演出で「実写化の理想系」として高く評価されてきた。2023年に公開された映画第1作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は興行収入12.5億円を超えるヒットを記録。そして、映画最新作となる『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が、5月23日より公開中だ。

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 原作ファンの間で「伝説のエピソード」として知られる「懺悔室」を、邦画初の“全編ヴェネツィアロケ”で完全映画化。イタリア・ヴェネツィアの重厚な雰囲気を背景に、「岸辺露伴」史上最大スケールで物語が展開する。

 今回は、実写版で岸辺露伴を演じる高橋一生と、懺悔室で「あやまち」を告白する謎の男・田宮役を務めた井浦新に、作品への思いや撮影裏話、そしてファンへのメッセージを語ってもらった。

――原作ファンからの応援や反響を感じることはありますか?

【高橋】とても感じますね。「ジョジョのファンだ」という方が他の撮影現場にも多くいらして、実写化当初から「楽しみにしている」という声をたくさんいただいていました。そうした声が直接伝わってきたことで、今までの作品とは少し違うな、と感じることがありました。

【井浦】なんとなく好き、ではなくて、岸辺露伴シリーズを本当に愛している方が多いんですよね。僕もその一人ですが、もし他の仕事で一生くんとご一緒していたとしても、「あ、露伴だ」と思ってしまう(笑)。今回一緒に現場に入ったときは、もう夢のようで、本当にこの世界に来てしまったんだという実感がありました。

【高橋】ありがたいことです。

【井浦】でも逆の立場になってみると、相当なプレッシャーだったと思います。一生くんが「露伴」だと、すべてのジョジョファンの思いが彼に向かうわけで。

【高橋】:実際、「それは荒木先生に聞いてください」って思うこと、たくさんあります(笑)。

――井浦さんは小学生のころからジョジョファンだったそうですね。

【井浦】はい。僕が小学生のころ、「週刊少年ジャンプ」の表紙と巻頭カラーで『ジョジョの奇妙な冒険』の第1話が掲載されたとき、「何だこの作品は?」と驚いた記憶があります。

――それだけ長く続いている作品の魅力とは?

【井浦】圧倒的なオリジナリティがあって、時代に左右されない作品だと思います。物語も絵も、何かの模倣じゃない。常に前衛、アバンギャルド。だからこそ、昭和、平成、令和と時代が移っても色あせないんだと思います。

【高橋】荒木先生の作品は、時代に合わせているというより、自分の内面に正直に描いている感じがします。僕は三部をリアルタイムで読んでいましたが、当時の絵柄と比べても、今はまた全然違います。でも、それが自然な進化に見えるのは、先生が「描きたいこと」を軸にしているからだと思います。

――露伴というキャラクターも、時代や絵柄の変化にも揺るがない存在ですね。

【高橋】そうですね。絵柄が変わっても、露伴の精神性は一貫していて、それが読者にも伝わっている。だから実写化するうえでも、自由度が高くて良かったと思います。

【井浦】僕も原作を改めて読み返して、露伴の変化を感じました。表情も違うし、どんどん変化していく。変わっていくことを恐れていない。それって本当にすごいことですよね。

――作品を重ねる中での変化については?

【高橋】1期では静謐(せいひつ)な雰囲気を意識しました。2期以降は動きのある演出が増えてきたので、芝居にもデフォルメを加えたり、いろいろ試してきました。映画版2作目となる『懺悔室』では、現場の雰囲気や共演者の方々の芝居に身を委ねながら演じることができました。

――今回の共演はいかがでしたか?

【井浦】一生くんの“カメラの扱い方”がとても印象的でした。露伴として持っているのですが、それ以上に、写真やカメラに対する愛情が現れているような手の添え方をされていて。現場でもずっと美しいなと感じていました。

【高橋】井浦さんの芝居には、大きく飛び込むような瞬発力があるんです。お芝居は助走が必要なことも多いのですが、井浦さんは軽やかにジャンプしてしまう。その裏には、荒木先生や作品、そしてこのチームへのリスペクトがあると感じていて。ただ、それを押しつけがましく見せない。ふわっと壁を越えてくるような魅力を、芝居の端々に感じました。

【井浦】この作品のチームは、既に完成された関係性があって、その中に僕たち――戸次(重幸)さんや大東(駿介)くんと一緒に飛び込んだ形だったんです。その「既に出来上がっている場所」に参加するのって、時には孤独を感じたり、うまくなじめなかったりもする。ですが、この現場は違いました。一生くんやスタッフの皆さんが温かく迎え入れてくれて、自然と「すべてを捧げたい」という気持ちになれたんです。これは本当に大きなことでした。荒木先生や作品への思いもありますが、それ以上に、この現場の雰囲気の良さがあったからこそ、自然と作品に気持ちを注ぎ込めた。そう感じています。

――映画をご覧になる方には、原作ファンの方もいれば、ちょっと気になってるくらいの方もいますよね。そうした観客に向けて、背中を押すような「見どころ」があれば教えてください。

【井浦】先日、完成した映画を試写で観たとき、エンドロールが終わった瞬間に、思わず立って拍手したくなったんです。参加しているからではなくて、ミュージカルや舞台を観たあとのような高揚感があったからだと思います。一方で、ヴェネツィアの映像の美しさもある。「岸辺露伴」や「ジョジョ」のことを知らなくても、一本の映画としてしっかり楽しめると思います。菊地成孔さんの音楽も素晴らしいですね。

【高橋】ほんとうに、音楽が神がかっています。僕も試写後に柘植さん(人物デザイン監修・衣裳デザインの柘植伊佐夫氏)と話したんですが、「これは映画的ではないよね」と。映像としては映画の枠にあるけれど、内側にあるものが“映画だけ”ではない。じゃあ何かと考えてみたら、ヴェネツィアを旅しているような気分にもなれるし、舞台を観ているような演劇的な部分も非常にある。物語に起承転結をつけなければならないという最近の傾向とは違っていて、岸辺露伴自身が「自分の物語は、自分が納得したら終わり」という人物ですから、観る人にもそういう余白が残るんです。観終わったあとも、どこかでその物語がまだ続いている感覚になるんですよね。劇場で音楽とともに体感してもらうことで没入感がより高まるんじゃないかと思います。ぜひスクリーンで味わってほしいです。
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