介護職員による高齢者虐待、過去最多1220件に 専門家が語る「虐待リスクの見抜き方」と施設…

2025/12/27 09:10 

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高齢者虐待件数は2007年度の調査開始以来、4年連続で過去最多を更新した。

 厚生労働省は25日、2024年度の高齢者虐待に関する調査結果を発表した。介護施設などで働く職員による高齢者虐待の件数は1220件で、前年度比8.6%増。調査開始以来、過去最多を更新した。虐待件数の増加はこれで4年連続となり、介護現場が抱える課題が改めて浮かび上がった。

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■専門家が指摘する「人員・教育・管理」の3つの不足

 こうした状況をどう受け止め、私たちは何に注意すべきなのか。老人ホーム情報サイト「LIFULL 介護」の編集長で、これまで300ヵ所以上の施設を訪問し、1500件以上の相談に対応してきた小菅秀樹氏は、虐待が起こる背景や、入居を検討する際に確認したい点について解説した。

 厚生労働省が行った調査では、職員による虐待の発生要因として、「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」「職員の倫理観・理念の欠如」「職員のストレス・感情コントロール」などが挙げられている。

 小菅氏は、これらの要因について、介護施設が抱える課題「人員不足」「教育不足」「管理不足」といった3つの不足が関係していると指摘する。

 「人員不足」では、職員の過重労働が常態化し、業務に追われ心身の余裕を失うことで虐待がストレスのはけ口となってしまうケースがある。「教育不足」では、適切なケアや知識に関する現場教育が不足することで、本人に悪意はなくても誤った認識のまま不適切な対応が行われてしまう可能性がある。「管理不足」では、内部通報が機能しないなど管理体制が十分でない場合、周囲が違和感に気づいていても是正されず、該当職員が働き続けるなど、問題が解決しない事態に陥ることもあるという。

 では、入居を検討する家族は何を基準に施設を見ればよいのか。小菅氏は、見学時に次の4つの視点を意識することが重要だと話す。

■老人ホームに虐待リスクがあるかを見極める4つのポイントとチェックリスト

1)職員の対応:職員に心身の余裕があるか、倫理観に基づいた教育が行き届いているか
・職員の身だしなみが乱れていたり、過度に無関心・無表情である
・入居者への態度が冷たく、威圧的である。または子ども扱いするような言葉遣いがよく見られる
・来訪者に対する言葉遣いや挨拶が粗雑である
・実施が義務付けられている虐待防止のための研修(身体拘束、ハラスメント含む)の、実施状況や内容が不明確

2)入居者の様子:入居者への配慮があるか、人手が足りているか
・入居者の身だしなみが整っていない(例:髪や爪、髭などの手入れがされていない、服が汚れている)
・入居者の居室や共有スペースにプライバシー保護への配慮が欠けている
・食後など入居者が長時間放置されている
・入居者の体に不自然なケガがあったり、怯えているような様子が見られる

3)施設内の清掃状況:清潔で安全な環境のための管理体制が整えられているか
・通路に段ボールやカート等が長時間放置され、入居者が転倒しやすそうな環境になっている
・トイレや浴室など共用部の清掃が行き届いていない

4)職員の雇用状況:職場環境が悪くないか、安定したケアを提供できるか
・離職率が極端に高い(一般的な離職率は15%前後)(離職率が高い=過重労働、人間関係が悪い可能性がある)
・正社員比率が著しく低い (パートや派遣職員が多数を占める場合、経験不足から安定したケアが提供されにくいケースがある)

 厚生労働省も、虐待の兆候や疑いを感じた場合には、市区町村の高齢者虐待対応窓口や地域包括支援センターへの速やかな相談を呼びかけている。

 過去最多という数字の裏には、介護現場の厳しい現実がある。施設を選ぶ家族の視点と、現場を知る専門家の知見が重なることで、虐待を未然に防ぐ力は確実に高まるはずだ。
ORICON NEWS

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